金融機関にとっても大きなメリット

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この制度の特徴は、ローンを提供している金融機関とも話し合いをしながら進めてゆく点です。

借りる側にとってローン(債務)の残りが免除になるということは、金融機関にとっては貸し出しているお金が戻ってこない、つまり不良債権になってしまうということです。

しかし、被災地域全体の復興が進まないことの方が金融機関にとってはより大きな損失になるとも考えられます。

このガイドラインは、住宅再建で新たな住宅ローンが生まれたり、事業再開で新たな融資が生まれたりすることで、金融機関の復興にも結びつくという視点も踏まえて考えられており、地域経済全体の柱でもあるのです。

試行錯誤の制度ゆえの問題点も

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東日本大震災を受けて最初に作られた「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」の利用状況をみると、個別の相談件数5886件に対し成立件数は1369件(2018年7月31日現在)と25%に満たない数となっています。

自己破産の状態に近いほどひっ迫した状況でないという理由以外にも問題点はあるようです。

理由1:利用しようとした方に税金の滞納やローンの延滞がある

利用の条件には災害前にこのような行為がなかったことが挙げられています。

理由2:金融機関や利用者への情報周知不足

以前は、双方が正確な情報を知らないがために相談から先に進まない状況も見受けられたようです。

現在は、金融機関や都道府県の弁護士会、税理士会など特定支援専門家に該当する機関での周知の徹底や取り組み方針の公表がされているようです。

日常的な家計管理はいざという時に大きな損失を招かないためにも大切です。

最初の制度発足から7年。関係機関への情報の周知を徹底させながら、使える制度になっていくことを期待します。

声を上げることから始まるたくさんの支援があります

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今回解説した「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」は、東日本大震災時の再建・復興が思うように進まなかったことから新たに生まれた制度です。

自然災害が多発する中で見えてくる課題については、政府や各機関が協力し支援の方向を探りながらより良い解決策を作っていこうとする動きが生まれます。

大切なことは、無理な自己解決策を探ったり、諦めたりするのではなく、たくさんの声を上げていくことです。

お金に関することで言えば、行政は各所に相談窓口を設け、損害保険会社は早急な保険金支払いのために全国から災害地域へ人員を集結しています。

金融機関は預金や融資に関しての迅速な対応を検討し、都道府県の弁護士会はこのガイドラインを含めた法的支援策を案内しています。

そして、日本国内だけでなく世界中からたくさんの義援金が被災者や被災地の未来を少しでも明るいものにしたいと送られてきます。

ぜひそれらを味方につけながら被災地の現状を発信し、できるだけ早い再建・復興につなげられることを願っています。

文・高村浩子(ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定AFP))/DAILY ANDS

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