次回・第42回は「天下分け目」ということなので、内容は小山評定~伏見城陥落~関ヶ原開戦前までといったところでしょうか。予告映像では、伏見城を守る鳥居元忠(音尾琢真さん)が「殿……お別れだわ……」と言う場面がありました。合戦のダイナミズムを重視する傾向が強い『どうする家康』のことですから、元忠はナレ死ではなく、妻の千代(古川琴音さん)とともに壮絶な戦死を遂げそうな気がします。

 前回の本コラムで少し触れたように、慶長5年(1600年)6月18日、家康は大軍を率いて伏見城を出立し、会津の上杉家討伐の途に就きました。留守を頼まれた元忠たちは、上方における家康の居城の伏見城を1800ほどの兵で守っていたのですが、7月18日、石田三成の命による4万もの兵に城を取り囲まれ、降伏勧告を拒否した元忠の部隊との交戦が始まります(伏見城の戦い)。

 元忠隊は善戦しましたが、ついに8月1日、伏見城内に敵兵がなだれ込み、元忠はその時点での生き残り300人の兵とともに、壮絶な戦死もしくは自害を遂げました。京都市内の養源院をはじめとした複数の寺院に、元忠たちの流血の跡を留める床板を天井板に張り替えた、いわゆる「血天井」が今でも見られます。これらは、伏見城の戦いの凄まじさを物語ると同時に、最後まで主君・家康を裏切らなかった忠義の武将・鳥居元忠の姿を後世に伝えるものです。

 元忠隊は「全員が戦死した」と伝えられていますが、江戸時代の軍記物語――たとえば幕末の『名将言行録』などには、彼らの奮戦ぶりがまるで見てきたかのように記されているので、実際は生き残った誰かが「語り部」になったのかもしれません。ドラマでは千代がその役割を果たしたということになると面白そうです。