吉本見たあとはキュルンキュルンな翔ちゃんどうぞ(写真:サイゾーウーマン)

 2013年4月期に放送された嵐・櫻井翔主演のドラマ『家族ゲーム』(フジテレビ系)。現在、TVerで1話と3話が無料公開中で、注目を集めています。そこで放送当時に公開した、ドラマ評論家・成馬零一氏によるレビューを再掲します。

目次

・『家族ゲーム』謎の家庭教師・吉本の教育につきまとう後味の悪さ
・悪役として振る舞うことで教育を行う教師
・第9話で描かれた吉本の過去とは?
・悪意の連鎖からどう抜け出すのか?
・沼田家の再生がどこか薄ら寒いワケ

※2013年6月22日公開の記事を再編集しています。
※ネタバレを含みます。

『家族ゲーム』謎の家庭教師・吉本の教育につきまとう後味の悪さ

 『家族ゲーム』(フジテレビ系)は1981年にすばる文学賞を受賞した同名小説が原作。過去に森田芳光監督・松田優作主演で映画化され、長渕剛主演でテレビドラマ化(TBS系)もされている。

 沼田家に謎の家庭教師・吉本が訪れることで、家族が翻弄されていくという展開は原作と同様だが、舞台を現代に移し、松田や長渕に象徴される強面で屈強だった吉本のイメージも、嵐の櫻井翔が演じる、軽薄で何を考えているのかわからない、不気味な男に改変されている。

 吉本は、引きこもりの沼田家の次男・茂之(浦上晟周)の家庭教師となり、さまざまな手段を駆使して、茂之を部屋から出して学校へと向かわせる。しかし、学校に戻ってきた茂之に味方はおらず、いじめに遭うこととなる。

 吉本は、茂之のクラスに乗り込み、生徒たちを脅迫して無理やりいじめを解決させるが、陰でいじめは続く。この辺りのいじめ描写は痛々しくて不快ですらあるが、「強者が弱者を踏みにじることの不快感」、それ自体が描きたいことなのだろう。

 やがて茂之は吉本の教育により、いじめに立ち向かう強い意志を獲得し成長していく。しかし、茂之がいじめられること自体が、吉本があらかじめ裏工作したプログラムであることが繰り返し描かれ、後味の悪さが常に付きまとう。

『家族ゲーム』悪役として振る舞うことで教育を行う教師