新郎新婦のスピーチが終わってこれで式も終わり、という時です。
酔っ払って赤ら顔をした新郎の父が千鳥足でマイクを持つ新郎のもとにやってきて、半ば無理矢理マイクをもぎ取ったのです。そして、「みなさんお集まり頂いてありがとうございます」と参列者へ感謝を述べ始めました。
「これぐらいで終わるんだったら、ただの微笑ましいハプニングだったんですけどね…」
目に涙を浮かべながら参列者に感謝の言葉を述べる父と、それを温かい目で見守る参列者たち。よっぽど息子想いの父親なんだなあ、と周囲が思っていると、衝撃の言葉が飛び出します。
◆「再婚することになりました!」
「こんな場で言うのもアレではありますが、重大発表があります! ジンの父親である私は、このたび、新婦のルミさんのお母さんと再婚することになりました!」と、新婦の母親と再婚することを宣言したのです。
ジンさんもルミさんもその事については何も聞かされておらず、初耳でした。もちろん、親族の誰も知りません。
会場は突然のことにしんと静まり返りましたが、参列者の1人が拍手をし始めると、それにつられた参列者たちが続々と拍手をし始め、割れんばかりの盛大な拍手となりました。
「私たちがもらった拍手よりも、大きな拍手をもらっていましたよ」
ルミさんは苦笑いしながら言いました。
◆悩んだすえに報告が遅れてしまった
「私も、ジンも母子家庭と父子家庭育ちでした。なので、法律的には何も問題ありません。でも、そういうことは事前に言っておいてほしかったですけどね」
お互いの娘と息子が正式に付き合いだしてからというもの何かと顔を合わせる機会もあって、その中で親同士も意気投合してしまったそうです。
「後で聞いたことですが、親たちも悩みに悩んだそうです。だからこそ言うのが遅れてしまったんですって。でも、だからって、ねえ? 何も自分たちの子どもの結婚式で発表すること無いですよね」