◆①辛みは味覚ではない、“痛み”である

キムチ
キムチに含まれる辛み成分は、カプサイシン
 そもそも「辛み」は、甘味や酸味などの他の味と比べて大きな違いがあります。それは、味覚ではなく、痛みであるという点です。

 この事実は、2021年のノーベル生理学・医学賞(カリフォルニア大学サンフランシスコ校のデビッド・ジュリアス氏とスクリップス研究所のアーデム・パタプティアン氏)によって広く知られるようになりました。

 受賞テーマは「温度受容体と触覚受容体の発見」。この研究によって唐辛子の辛味成分であるカプサイシンを感知するセンサーが発見され、私たちに改めて辛い食事について考えるきっかけを与えてくれました。

 つまり辛みについてのヒミツが一般に周知されるようになったのは、実は最近の話ということになります。

 研究内容の詳細はここでは省きますが、ここで確認したい事実は、辛みを感じるセンサーは、もともと“痛み”を知覚するセンサーであるということ。つまり、カプサイシンが口に入ると、刺激(電気信号)が味覚神経ではなく三叉神経を経て脳に届き、痛みや熱さを感じるのです。

 唐辛子の辛み成分「カプサイシン」は脂溶性(油に溶けやすい性質)の物質なので、口の中に入ると舌の組織内部まで浸透してきます。つまり、唐辛子料理を食べた後に急いで水を飲んで舌の表面を洗っても辛味はおさまりません。

 生まれた瞬間からトウガラシを好む赤ちゃんはほとんどいません。どの国においても親が少量から少しずつ増やしていくか、辛いものが苦手な子どもには強制をしないというのが慣習になっています。

 それでは大人が辛い食べ物を与えるタイミングを検討するために、次のポイントに移りましょう。子どもの神経回路は何歳頃までに完成するのでしょうか?