大切な親族が亡くなったとき、何も考えず、当たり前と思ってやったことが「負の遺産」を招くことになる場合が実際にあります。今回の記事では「親族が死亡した直後に絶対にやってはいけないこと」を詳しく解説します。家族が遺してくれたお金が無駄にならないよう、しっかりチェックしてください。
銀行への連絡
もしものことが起きたからといって、すぐに銀行へ連絡するのはおすすめできません。連絡した時点で故人の口座は凍結されてしまい、出金・入金が一切できなくなるためです。
ただし、現実的な問題として葬儀費用を払うためにお金を引き出さないといけないことはありえます。口座を凍結する前にやむなく引き出す場合は、明細書を保管したり、「いつどこでいくら使ったか」などのメモを残したりして、トラブルが起きないようにしましょう。
また、口座凍結後にどうしてもお金が必要になったとき、口座凍結の解除が間に合わない場合でも、仮払い制度を使う方法によりある程度まとまった金額を確保することが可能です。
相続人全員の同意書の提出か家庭裁判所への申立により行います。また、相続人のうち1人が申請する方法でも可能ですが、最大でも150万円までしか確保できない点に注意が必要です。
遺言書の開封
故人の部屋の本棚などから遺言書が見つかることもあるかもしれませんが、勝手に開封するのはやめましょう。
検認といって、その遺言書が偽造されたものだったり、改変されていたりなどの問題がないか家庭裁判所に確認してもらう手続きが必要だからです。
検認をせず開封してしまった場合、5万円以下の科料を科せられる可能性があります。
万が一開封してしまったなら、すぐに家庭裁判所に行って事情を説明しましょう。
故人の携帯電話の解約
「もう使うこともないのだから…」と亡くなってすぐに携帯電話の解約を考える方がいます。 しかし故人と電話でつながっている知人も多くいるでしょう。もし連絡が必要という場合も考えて、少しゆとりをもって解約しましょう。
遺産をすぐに使う
遺産をすぐに使うのは止めましょう。そもそも、故人の葬式のための費用などの例外を除き、遺産を使った場合は単純承認とみなされます。この場合、故人が遺した財産は、プラス・マイナスを問わず相続しなくてはいけません。つまり、故人に数千万円の借金があったとしても相続放棄ができず、遺族が代わりに返済することになります。
■【要申請】遺族が受け取れる給付金について
なお、親族に万が一のことがあった場合、条件に当てはまれば給付金を受け取ることができます。これらの給付金は自分から請求しないと受け取れないことがほとんどです。
加入している公的健康保険から支給されるもの | 葬祭費、埋葬料 |
国や自治体などから支給されるもの | 未支給年金の請求、遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)、死亡一時金、寡婦年金、児童扶養手当、高額療養費の請求 |
加入している民間の生命保険もしくは共済から支給されるもの | 死亡保険金、死亡共済金 |
生前の勤務先から支給されるもの | 弔慰金、死亡退職金 |
葬儀が終わり次第できるだけ早い段階で問い合わせをし、手続きを進めていきましょう。
万が一のためにも事前に確認しておこう
親族の死亡時は悲しみに浸っている暇もなく、さまざまな手続きが必要となってきます。また、対応を誤ると故人の遺した借金を遺族が肩代わりするなど思わぬトラブルも起きるので要注意です。事前に正しい対応を頭に入れておくのはもちろん、不明点があれば税理士や弁護士など専門家に聞きながら進めましょう。
文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー) 立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。