◆男子校はミソジニーの温床か

男子校はホモソーシャルな空間であり、そこで男子校ノリに触れる時間が長いほど、ミソジニーの考えに染まってしまう。それは、性のつまずきを引き起こし、同時に自分の身の回りの人をもつまずかせることになる……。そうした考えから、「男子校にこそ性教育が必要だ」という声もよく上がる。

しかし、灘高の授業に記事を通して触れ、おおたさんの話を聞いていると、その前提に疑問がわいてくる。

現在おおたさんは、「男子校の性教育、ジェンダー教育」を取材している。灘高の前には、巣鴨高校(東京)でドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を題材にした授業に立ち会い、記事にした。そのほかにも、すでに広島学院(広島)、聖光学院(神奈川)、桐朋高等学校(東京)などの取り組みも見てきた。

灘高性教育202310
「異性のグループがいない環境で性、ジェンダーを学ぶことで、共学校とは違う何かが起きるのではないか、と考えて取材をはじめました。いま、特に私立の中高一貫校では学校説明会などで、STEAM教育(※)やグローバル教育に注力しているとアピールされることが多い。すなわち、経済競争のなかで勝ち組になるスキルを教育をします、という意味です。

僕は、これからの時代を生きる子どもたちに本質的に必要なのは、競争をしなくても済む社会を作ろうという感覚だと思うんですよ。そのために力を入れるべきは、市民教育。そこに主権者教育や環境教育、それからジェンダー教育が含まれます」(おおたさん)

※STEAM教育:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、科学的知識や論理的思考力に加え、創造力や表現力などを伸ばすための教育