もちろん、『推しの子』の内容が木村花さんが自殺に追い込まれた過程と似ていると発信した第三者にも、それを受けて批判をした木村響子さん自身にも、何より自殺者が現実にいる恋愛リアリティショーを題材として扱った『推しの子』の作り手と送り手それぞれに責任はある。その責任の所在や理由を考えることには意義があるし、それぞれへの批判には正当性があるものが多く見受けられた。この論争により、アニメの放送や製作の中止を危惧するファンの心情も、理解できるところはある。

 だが、その批判が「一線を超えていないか」は、誰もが考えなければいけないことだろう。そのSNS時代の学びは、『推しの子』本編の以下の言葉にもしっかり表れていたのだから。

「SNSは有名人への悪口を可視化。表現の自由と正義の名の下、毎日の様に誰かが過剰なリンチに遭ってる。皆、自分だけは例外って思いながら、しっかり人を追い込んでいるのよ。何気無しな独り言が人を殺すの」(『推しの子』第3巻より)

 なお、『推しの子』の原作者である赤坂アカさんは、KAIYOUの記事にて、「(恋愛リアリティショーやSNSでの誹謗中傷は)(木村花さんが亡くなるより前の)連載前から描くって決めていた」などと答えている。個人的に本編の内容は木村花さんの自殺のことと異なる部分も多いと思えたが、それでも原作漫画およびアニメの作り手が、部分的にでも作品に反映したかどうかははっきりとはしない。それ以上は第三者が踏み込んで、断言できることは何もないだろう。