アニメ『推しの子』が連日話題を集めている。原作漫画の累計発行部数は800万部を突破し、YOSASOBIの主題歌が流れるオープニング映像が1500万回再生を記録するなど、若者を中心に絶大な支持を得ているのだ。

 そして、大きな論争を呼んだのが、元女子プロレスラーの木村響子さんがTwitterで痛烈な批判をしたことだ。劇中で恋愛リアリティショーの出演者がSNSでの炎上と誹謗中傷により自殺未遂まで追い込まれる内容が、2020年5月23日に亡くなった娘の木村花さんのことに類似している、その命日に近いタイミングでの放送という“やり方”を「心の底から軽蔑します」とまで綴ったことは、とても痛ましいし、重い。

本編で批判されたことが現実でも起こる悲しさ

 何よりの問題は、木村響子さんへのバッシング、はたまたデマもしくは真偽不明の言説の流布があったことだろう。後述もするが、『推しの子』本編でははっきりと誹謗中傷の浅ましさ、それに対する怒りが込められているのにも関わらず、この論争から現実のSNSで誹謗中傷に近い、あるいは誹謗中傷そのものの傷つけ合うやり取りがあったというのは、皮肉と言うのもはばかられるほど悲しい。