◆「普通の言葉だけど刺さる」直哉の台詞

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――配役の秘話を聞いてなおさら、直哉が節々で吐く台詞が印象的だなと思います。特に、第1話ラスト、「ここにいるしかないんだから」と山田さんが電車内で放つ台詞にしびれます。どうってことない言葉なのに、なんでしょう、このリアルな感じは。金子さんの脚本は、パワーワードではなく、日常的な言葉でつむがれるからこそ、キャラクターに力強さが吹き込まれるように思います。

金子:それは、すごく気をつけていることなので、ご指摘は嬉しいです。私の信条として、脚本家が選ぶ言葉、書く台詞がキャラクターの前に出ないようにしたいと思っています。

 視聴者の皆さんの心には、登場人物たちの言葉として残ってほしいからこそ、普通の言葉でありながら、『刺さる』台詞を目指しています。

――『ペンディングトレイン』では、そうした台詞の巧みさを特に感じます。第6話、焚き火場面での「俺は何にも期待しない。そう決めてるの」。第7話、雨宿り場面での「それが逃げてる? それが俺なんだよ」。セリフがキャラクターを性格づけ、しかもそれが説明には聞こえないという。直哉のキャラクター性がにじむ素晴らしい台詞です。

金子:「それが俺なんだよ」、あの台詞の言い方、思い出して泣きそうです。それぐらいあの場面のお芝居は、ほんとうに素晴らしいです。

――直哉の頑なで、意固地で、がんじがらめな感じ。『牛に願いを Love&Farm』(2007年)で玉山鉄二さんが演じた高清水高志にすこし似ています。

金子:そう言われると、そうかも知れません。どことなくこじらせ系キャラクターの系譜ですね。私の書いた作品の中では、『着飾る恋には理由があって』で横浜流星さんが演じた藤野駿もこの系譜にあたるかと思います。