◆「山田裕貴さんに人生賭けます!」
――山田裕貴さんの民放GP帯連ドラ初主演作品がなかったことは、ほんとうに意外でした。脚本を書くにあたって特別な思いがありましたか?
金子:『ペンディングトレイン』は、名もなき人々の戦いの物語です。キャスティング段階で、山田さんのお名前が上がったとき、初主演というのが、物語の企画と合っているなと思いました。山田さんが主人公を演じたら、頼りにもなるけれど、不安を駆り立てる絶妙な感じもしたからです。
山田さんはじめ、横並びの群像劇なら、主人公たちがどうなってしまうのか、もしかしたら助からないかもしれない。先の展開がわからない設定が、その役柄を呼んでいるという、本来あるべきドラマの作り方だなとしっくりきました。
――なるほど、山田さんが萱島直哉役を演じることは、ある意味、必然的なことだったのですね。
金子:山田さんが熱い思いを持っている方だということを知っていたからこそ、後悔なく初主演作品に挑めるよう寄り添いたいなと思っていました。
でも当初は、赤楚衛二さんが演じている消防士の白浜優斗を主人公に想定している時もありました。優斗役のほうが誰を追っていけばいいのか、ドラマのガイドとして視聴者がわかりやすいと思ったからです。
――では、なぜ最終的に山田さんが萱島直哉役を?
金子:山田さんとお話しているうちに、どちらの役を演じてもいいなと思うようになりました。でもなんとなく山田さんは、直哉のほうに惹かれている気がしました。
もちろん脚本家として、優斗役で推すこともできましたが、山田さんの中で何かひらめきがあると感じたので、そちらに賭けようと思いました。私自身、「山田裕貴さんに人生賭けます!」と周囲に言っていたくらいです。
決して人々を助けるヒーローではなく、普通の人を選んだ。これが結果的にこのドラマの貫くべきスタイルとテーマに繋がっていった気がします。