◆女性の目から見た歴史
深沢:描き方にも変遷があって、かつては、北朝鮮の人は悪人とされることがほとんどでしたが、日本でも2001年に公開されたイ・ビョンホン主演の『JSA』あたりから、「北の人たちも私たちと同じ人間なんだ」という描写に変わりました。
――本作は方子、マサ、徳恵のほかにも女性の登場人物が多く、これまでとは違う視点で歴史が見直されていると感じました。方子さんの結婚相手である李垠は李氏朝鮮最後の王として資料的な資料も多く、これまでたくさんの人が書いてきた人物ですが、方子さんの目をとおして見ることで新たな発見はありましたか?
深沢:李垠さんは、弱い人として描かれることが多いと思います。日本から求められることに従いつづけたからなのでしょうけれど、その実、感情や考えを自分ひとりの内に溜めて溜めて、耐えつづけた人なのではないかと思いました。自身の言動が国同士の関係に影響すると考えると、うかつには振る舞えません。私はそこに、強い意志を感じました。
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