◆睦まじい夫婦の消えない寂しさ

深沢:わずか10歳で日本に連れてこられたとき、父王から「忍」の一字が書かれたものを渡され、それを後に妻の方子さんに見せるんです。生涯耐えつづける強さがあった人だと思います。

方子さんにも「一緒に生きる」という想いはあったと思うのですが、それでも話せないことは多かったでしょう。仲がよい夫婦ではありましたが、一緒にいる人のなかに触れられない部分があるのは、方子さんにとってはひとりでいる以上の寂しさがあったかもしれません。

<文/三浦ゆえ>

【三浦ゆえ】

編集者&ライター。出版社勤務を経て、独立。女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄著、ブックマン社)シリーズをはじめ、『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)、『リエゾン-こどものこころ診療所- 凸凹のためのおとなのこころがまえ』(三木崇弘著、講談社)、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)などの編集協力を担当。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。