世界史でも日本史でも教科書を開けば、そこに出てくる名前はほとんどが男性のものである。多くの国で長らく政治や経済、文化といった“表舞台”は男性中心の世界だった。同じ時代を生きた女性たちの存在は“ないこと”にされているも同然で、それが市井の女性であればなおさらである。
歴史長編小説『李(すもも)の花は散っても』(朝日新聞出版)の主人公は、李方子(り・まさこ/イ・バンジャ)。日本の皇族・梨本宮家に生まれ、国の政策で朝鮮の王位継承者と結婚、戦争がつづく大正から昭和を息抜き、1989年に亡くなった。日本でも世代が下になるほど、知る人は少ないだろう。しかし、彼女の視点からその時代を見直すと、“ないこと”にされてきたものがたくさん見えてくる。
そして、本作にはもうひとりの主人公がいる。
著者の深沢潮さんにお話を聞いた。
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