◆気が楽になり、夫とは日常的な会話が弾む

 元カレと関係をもってから、彼女は自分でもわかるほど生き生きと暮らすようになった。息子には「お母さん、最近、怒らなくなった」と言われた。義母にも素直に感謝の気持ちを伝えられるようになった。

「閉塞(へいそく)的だった気持ちが明るくなったんでしょうね。元カレが私をときどき別世界に連れて行ってくれるから」

 ノリコさんはそう言ってチャーミングな笑顔を見せる。夫は「何かいいことあったの?」と顔色をうかがように尋ねてきた。彼女は「仕事がうまくいってるの」とごまかした。夫がレスなのは他に女性がいるからではないか、自分に関心がなくなったからではないかと鬱々としていたノリコさんだが、夫の心の中までは考えないようになった。気が楽になり、夫とは日常的な会話が弾む。

「これでいいんだと思えるようになりました。家族を裏切って恋をしているという後ろめたさはもうありません。家族との関係と元カレとの関係は別もの。どちらも大事にしていきたいと今は思っています」

 この先、何があるかわからない。ただ、何があっても自分で引き受けて対処していく覚悟はできていると彼女はキリッとした表情で言った。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio