ウィーン世紀末芸術を代表する画家エゴン・シーレ(1890-1918)の、日本国内では実に30年ぶりとなる大規模な展覧会『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』が4月9日(日) まで、東京都美術館にて開催されている。
美術、音楽、建築など芸術の爛熟期を迎えた世紀末のウィーンに生き、わずか28年の人生を駆け抜けた“夭折の天才”エゴン・シーレ。同展では、短い生涯のなかで自らの表現を探求し続けたその画業を展観。“シーレの殿堂”ともいわれるウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、シーレの油彩画、ドローイングなど約50点と、クリムト、ココシュカらシーレと同時代の画家たちの作品をあわせて約120点が紹介されている。
最年少でウィーンの美術学校に入学し、若くしてクリムトにその才能を認められるも、美術学校の保守的な教育に満足できずに退学。仲間たちと新しい芸術集団を立ち上げるが、猥褻な作品を制作し公にしたとして逮捕されるなど波乱の生涯を送ったシーレ。先鋭的な表現や当時タブーとされていた主題を扱ったその作品はなかなか社会に受け入れられず、孤独と苦悩を抱えたシーレは自らを深く洞察し、人間の生と死、性といった根源的なテーマを生々しく描き出した。同展では、そんなシーレの生涯を年代順にテーマを立てて、全14章でたどっていく。
なかでも見どころとなるのが、シーレの自画像だ。自分を見つめ、自画像を描くことでそのアイデンティティを探求していたシーレは、短い生涯のなかで200点以上の自画像を残している。第7章「アイデンティティーの探求」では、《ほおずきの実のある自画像》や《抒情詩人(自画像)》、《裸体自画像(「ゼマ」版画集特装版のための試し刷り)》など多様な表現の自画像を紹介。同展のメインビジュアルにもなっている《ほおずきの実のある自画像》は、緊張感のある構図や朱色のほおずきを配置したアクセント、肌に使われている多様な色彩の表現など、シーレの才能が凝縮された一作だ。