NVCを用いた具体的な会話の事例
では、この事例で上司の方から状況をNVCの4つのステップで分解してみましょう。
ステップ1:観察「部下にさせたほうが良いと思う仕事が急に発生した」
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ステップ2:感情「部下ならやれる。部下がやって当然だ、自分がやるべきではないと感じている」
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ステップ3:必要としていること(ニーズ)「期日を決めて部下を動かすこと。部下に仕事の経験をさせること。自分の役割を果たすこと。それで満足感や達成感、使命感を得たい」
ここまでのプロセスを踏むと、部下に依頼する言葉となる「ステップ4:お願い(リクエスト)」もかなり変わってくるはずです。
例えば「僕にとっても急な仕事が発生してしまった。業務の内容的に僕がやるよりも上司として君にこの仕事をお願いする事が妥当だと判断している。急で悪いが、来週までに仕上げてもらうことはできないだろうか」
こういう言い方をするだけで、部下も少しは「聴く耳」を持てるはずです。
部下の反応もNVC的に分化してみましょう。
ステップ1:観察「急に仕事を無茶振りされた」
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ステップ2:感情「仕事を頼まれることは嫌ではないが、急に無茶振りされるのは嫌」
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ステップ3:ニーズ「もう少し時間か、協力者を用意してくれればなんとかなる」
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ステップ4:お願い「一人で来週までに仕上げるのは難しいですが、力になりたいので、誰かサポートしてくれる人を用意してもらうか、先輩がサポートしてくれませんか」とお願いする。
どうでしょう?会話から暴力的な部分が取り除かれ、やっとコミュニケーションが成立しています。
これらはあくまでひとつの事例に過ぎませんが、NVCではあらゆる会話をこのように丁寧にステップを踏んで進めていくことを目標としています。
「察して」「言わなくてもわかる」は通じません。
関係性が近い相手とこそ丁寧に会話を進め、双方の本当の「ニーズ」を探り、それを叶えることが目標なのです。
NVC的な会話には毎日の練習が不可欠
NVC的な会話をするには日々の練習と実践が欠かせません。
ヨガの練習と同じです。
日常生活でイラッとする場面があればそれはNVCの練習のチャンスと捉え、なぜ今気持ちが動いたのか、自分の内面を掘り下げるようにします。
イラッとした場面を掘り下げると大抵の場合、奥底には「私のことをわかってくれていない」「こちらの気持ちを理解してくれていない」「私の気持ちにもなって」といったものがあるはずです。
そう感じるのであれば、ニーズは「私を理解してほしい」になるので、「私の状況や心」をより細かく伝える必要があります。
言葉にして伝えなければ相手が理解してくれることはありません。
「イラッとした」「ムカついた」「黙って我慢する」で終わらせず、「そういう言い方に傷ついた」「私の状況を理解せずに▲▲と一方的に言われて悲しかった」などより細かく気持ちを伝え、「私の○○を理解してほしい」とニーズを伝える必要があるのです。
ちなみに、自分のニーズを知るだけでもイライラや怒りが消えることが多くあります。
相手に自分のニーズを叶えてもらう必要はなく、自分の気持ちを自己理解するだけで、自分で自分のニーズを叶えることもできるからです。