もし給与額が突然変わったら

標準報酬月額は定時決定にて通常決まり、9月から1年間は原則変わらない。そのため会社の繁忙期などが1年の保険料額に大きく影響する場合がある。4月から6月の給与算定の対象となる時期に通常より多く働き給与額が高くなると、同年9月から1年間の保険料がより高くなってしまう。このような事態はもちろん、4月から6月以外の月にも起こり得る。

給与額が大きく変動しても、一度決まった標準報酬月額は変わらないのだろうか。実際には一定の条件を満たせば翌年の定時決定を待たずに改定される。この改定を随時決定と呼ぶ。随時決定が行われるのは主に3つの条件を満たした場合である。

条件の1つは昇給または降給等による固定的賃金の変動だ。固定的賃金とは支給額や支給率が決まっている賃金である。例えばベースとなる基本給、日給、時間給、請負給等、また住宅手当や役付手当等の固定的手当などが該当する。ほかに日給から月給への変更といった給与体系の変更時も当てはまる。

もう1つの条件は、変動があった月からの3ヵ月間に支給された報酬より算出された標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じることである。この報酬には残業手当等の、状況によって変化する非固定的賃金を含む。

最後の条件は変動月からの3ヵ月間の支払基礎日数が17日(特定適用事業所勤務の短時間労働者は11日)以上だということである。この3つの条件を全て満たした場合、随時改定が行われる。

随時改定の例外

規定の条件を満たしていなくとも随時改定される場合はある。例えば企業の業績が悪化した時などに従業員を一時的に休職させる一時帰休のため、継続して3ヵ月を超えて通常より低い休業手当が払われた場合だ。また一時帰休が解消されて報酬が通常の状態まで戻った場合なども、随時改定の対象になり得る。

固定的賃金の変動月から3ヵ月間の標準報酬月額が2等級以上変更されてなくても、場合によっては対象になる。等級の上限、下限に係る変更があった場合である。昇給時であれば30等級から31等級になる時や1等級から2等級になる時だ。降給により31等級から30等級に、2等級から1等級になる場合も該当する。

逆に2等級以上の変更があったとしても、次のケースは随時改定の対象にならない。1つは固定的賃金が上がっても非固定的賃金が減ったために変動後の3ヵ月間に報酬平均額が下がり、2等級以上の差が出た場合だ。もう1つは固定的賃金が下がっても非固定的賃金が増え変動後の3ヵ月間の報酬平均額が上がり、2等級以上の差が生じた場合である。

そのほか病気や怪我、家族の事情などで長期間会社を休む必要に迫られた際、休職して休職給を受けた場合は固定的賃金の変動がある場合とはされない。したがって随時改定の対象にはならない。

実際に随時改定の対象となるのは

随時改定の対象になる場合の具体例をあげる。対象になる前の状態は報酬月額30万、うち基本給24万円、各種手当等6万円とし、それから昇給と残業手当等の増加により報酬が増加したケースを想定する。

基本給は昇給によって1万円上がり25万に、手当等は4万円足され10万円になり、報酬月額は合わせて35万円へと変更された。翌月、翌々月も基本給はそのままで、手当等はそれぞれ9万円と11万円であった。支払基礎日数はいずれの月も20~22日の範囲に収まっている。

変動月からの3ヵ月間における報酬総額は35万円と34万円と36万円の和で105万円となり、月数の3で除するとその平均額は35万円となる。こうして標準報酬月額は30万円から36万円へと変更された。

等級としては19等級から22等級への変更である。等級は2つ以上変動し、ほかの条件も満たしたため、この場合は随時改定の対象となる。仮に変動月からの3ヵ月間が10月から12月だった場合、随時改定の反映は翌1月に行われる。

文・ZUU online編集部/ZUU online

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