等級の違いが及ぼす影響
等級が1つ違った場合、実際1年間の厚生年金保険料にはどれくらいの差が生まれるのだろうか。報酬月額34万円の場合と36万円の場合を比較してみる。計算に標準賞与額分の保険料などは含めない。
報酬月額34万円だと21等級の範囲33万円以上35万円未満に該当するため、標準報酬月額は34万円となる。報酬月額が36万円だと22等級の範囲35万円以上37万円未満に該当するため標準報酬月額は36万円となる。
各金額に9.15%を掛けると標準報酬月額34万円の場合は3万1,110円、標準報酬月額36万円の場合は3万2,940円だ。1年分だと、前者は37万3,320円、後者は39万5,280円となる。月に1,830円、1年で2万1,960円の違いが生まれる。
なお等級が1つ違えば、標準報酬月額は数千円から数万円ほど違ってくる。そして等級が上がるにつれて等級間の差額はやや広がる傾向にある。
1等級の標準報酬月額は8万8,000円、2等級だと9万8,000円、3等級10万4,000円、4等級11万円というように、一桁の等級だとその間の差異は6,000円から1万円未満だ。
全等級の中間あたりからは差がより広がってくる。14等級から15等級に上がると20万円から22万円になり、2万円の差が生じる。23等級38万円から24等級41万円になれば差は3万円と、もう少し大きくなる。
1つの等級が対応している報酬月額の幅も、標準報酬月額と同じように等級が上がるにつれてやや広がる傾向にある。保険料もそれに対応して等級間の差額は少しずつ広がっていく。
報酬月額と標準報酬月額の決め方
厚生年金保険料を計算するなら等級と標準報酬月額の確認が必要となる。ただ等級、標準報酬月額の前に、そのもとになる報酬月額がどう算出されているかを知ることも重要だ。
報酬月額となるのは原則4月、5月、6月の3ヵ月間に受け取った報酬総額を平均した金額である。いずれの月においても給与計算の対象となる日数、支払い基礎日数が17日以上あることが基本的な条件となる。
3ヵ月間の報酬には、基本給に加え各種の手当が含まれる。残業手当、通勤手当、役付手当、住宅手当、家族手当などがその一例だ。それらの手当などを含んだ税引き前の給与3か月分の平均額が報酬月額となり、同時に標準報酬月額の判断材料になる。
標準報酬月額は基本的に年1回、定時決定という方法で決められる。7月1日時点において事業主に使用されている全被保険者の標準報酬月額を、4月から6月の給与をもとに報酬月額を計算したうえで導き出す方法だ。同年9月から翌年8月まで、その標準報酬月額が保険料算出の基礎となる。
仮に4月、5月、6月の報酬がそれぞれ36万円、37万円、38万円だった場合、平均額は37万円となる。37万円は23等級、報酬月額37万円以上39万5,000円未満の範囲に含まれるため、標準報酬月額はその範囲に設定された38万円に決定する。これに労働者負担分の保険料率9.15%を掛け、月額で3万4,770円、1年分で41万7,240円が標準報酬月額に基づく保険料となる。
特定適用事業所に勤務する短時間労働者、契約社員や準社員、パートタイマー、アルバイトなどの人の場合は、主に支払基礎日数の面で正規社員とは条件が異なる。4月、5月、6月のどの月の支払基礎日数も11日以上なら、定時決定にて算定される。