一生に一度は読むべき本【小説】
小説には、一つの物語を通して作者が伝えたいメッセージを感じられる魅力があります。
そこでここでは、「死ぬまでに読むべき本!」とうたわれる【名作小説】を紹介します。
①太宰治「人間失格」
「人間失格」は、日本を代表する小説家太宰治の作品。
映画化や漫画化など、現代もなお多くの人に読まれ続ける日本近代文学の代表作品です。
名作と言われる作品だけあって、学生の頃に一度読んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。
そんな方にこそ、大人になった今だからこそ読み返し、そして周りの人に勧めて欲しい作品。
読み手によって感想は違えど、様々な要因がきっかけで「自分は人間失格」と闇落ちする主人公の姿や心情に共感する方も多いかもしれません。
幼少期から自分を偽り、無理し続けた結果、心のどこかで「孤独」と戦い、生きづらそうに生きる主人公の姿。
実は誰しも、主人公のように心病んでしまう可能性があるのです。
生きづらさだけでなく、人はそれぞれ幸せの価値観が異なること、人間の恐ろしささえも描かれている作品です。
②村田沙耶香「コンビニ人間」
『コンビニ人間』は、第155回芥川賞受賞作品。
ある種「狂気」さえも感じるラストに衝撃を受ける方も多いはず!
「普通」という言葉は普段からよく使う言葉ですよね。
日常的に意識せず使っている「普通」という言葉こそ、本書のキーワードを握るもの。
本作品は、登場人物のセリフや行動などから、自分が思っている「普通」と他人にとっての「普通」や「常識」が異なることについて非常に考えさせられます。
相手に自分の「普通」を押し付けていないか?
周りの人が決める「普通」を押し付けられていないか?
読み終わったとき、きっと自分の中にある「普通」という基準を見つめ直すはず。
「普通じゃない」と言われるもの、「普通」と言われるもの、どちらも愛すべきもので、そこに差があってはいけないのかもしれない、と考えるきっかけになるのではないでしょうか。
現代社会の働き方や生き方について、作者からの強いメッセージ性を感じる部分も。
人にとっての「幸せ」の価値観は大きく異なることに気づかされる1冊です。
③ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」
「一生に一度は読むべき小説」で検索すると、どの記事にも必ず登場する書籍の一つ。
作者は、アメリカの作家、ダニエル・キイス。
日本では、TBSで2015年にドラマ化もされた作品です。
主人公は、幼児程度の知能しか持っていないチャーリー・ゴードン。
物語は、知能を高める手術を受けたことがきっかけとなり、彼の人生が一変することから始まります。
彼の生き方には、人間の人生「全て」が詰まっているようにも感じられます。
無邪気だった幼い頃の自分、大人になって社会と関わりを持つようになった自分。
知識を持って成長していくことで忘れてしまった「大切なこと」はないだろうか…と。
主人公が葛藤する様子に、感情移入してしまう方も多いはず!
本のタイトルの意味・著者の伝えたいメッセージの真意に気づいた時、あなたにとってきっと一生忘れられない本になるはずです。
④朝井リョウ「何者」
「何者」は第148回直木賞受賞作品で、2016年には映画化もされた作家・朝井リョウの代表作。
テーマは「就職活動」。
登場人物たちが就職活動を通して、自分は「何者」なのかを悩み、苦しみ、葛藤する姿が実に如実に描かれています。
就職活動の経験がある方であれば、過去の就職活動時期の気持ちや、辛い経験などを思い出すことになるでしょう。
リアルに描かれた世界観に引き込まれ、必ず「共感」してしまう部分があるはず。
なぜこの作品を「一生に一度は読んでおくべき本」に選んだかというと、何歳になっても心に残っているだろうセリフが多いからです。
登場人物たちのセリフを通して、自分は何者でもなく「自分」でしかないこと、かっこ悪い自分を認めることも大切さを学ぶことができます。
読み終わる頃には、自然に自分自身を見つめ直したくなっているはず。
近代らしいSNSなどが作中に登場するのも非常にリアルで、ストレスなく最後まで読み進められますよ。
・現在の自分に迷いがある人
・転職活動を視野に入れている人
当てはまった方にぜひおすすめしたい小説です。
⑤道尾秀介「片目の猿ーOne‐eyed monkeys」
道尾秀介さんは、映画化もされた「カラスの親指」や話題を集めた「向日葵の咲かない夏」などを手がけたミステリー小説家。
本作「片目の猿」もミステリー小説ではありますが、明るくコミカルなタッチの部分も多く、非常に読みやすい作品。
現代社会に通ずる強いメッセージ性をもつことから、一生に一度は読むべき本として多くの方におすすめしたい一冊です。
本書のテーマは読み手によってさまざま。
しかし、個人的に本書のテーマの一つに「目に見えるものが全てではない」というメッセージを感じます。
道尾秀介作品といえば、クライマックスでの「どんでん返し」が非常に醍醐味。
本作にもそうした「どんでん返し」がしっかり盛り込まれていますが、最終的には「文字の中で得られる情報だけでは真実は見えてこない」という強いメッセージ性を感じ取ることができます。
ネットやSNS、フェイクニュースなど、情報が溢れる現代において、目の前の情報だけで物事を捉えてしまうことありますよね。
本作は、クライマックスに明かされる衝撃のどんでん返しや、主人公のセリフなどから「今、目に見えているものだけが真実ではない」という大切なことに気づかされる作品です。
コンプレックスに悩んでいる方や、「自尊心」「偏見」という言葉に強く惹かる方などにおすすめの小説です。
⑥三秋縋「3日間の幸福」
物語は、「寿命を買い取る店がある」と噂を聞きつけた主人公が、自分の寿命を査定し、思いの外長生きしない人生であることや自分の寿命の査定価格は「1年につき1万円」という金額を知るところから始まります。
ここまで読むと、本作品のテーマは「残りの人生をどう過ごすのか」と感じてしまうかもしれません。
事実、主人公は残り3ヶ月の寿命以外を全て売り払い、ここぞとばかり残りの人生を謳歌しようと健闘していきます。
しかし、本作品のもっとも注目すべき部分は、「なぜ1年につき1万円という査定価格しかつかなかったのか」という点です。
1年でたった1万円という金額は、ほとんどの人が「安すぎる」と感じる場面のはず。
「もっと自分の人生は価値のあるもののはずだ」
「命を削るんだから億万長者くらいにはなりたい」
誰しも「自分の人生には価値がある」と思っているはずです。
本作品は、物語を通して「自分の人生の価値観」について考えさせられる一冊です。
自分の人生において一番大切なものは何か、守りたいものは何か、主人公の言動を通して「自分ならどうするのか」を常に考えながら読み進められるはず。
・これからの人生どう生きたいか迷っている人
・自分の人生にどこか絶望してしまっている人
当てはまる方はぜひ手にをとってみてください。
「人生がキーワードになった自己啓発本が苦手」という方も物語を通して自分の人生を振り返ることができるので、おすすめですよ。
⑦恩田陸「夜のピクニック」
物語の舞台は高校生活最後の行事「歩行祭」。
80キロをひたすらに歩くというシンプルな行事ながら、登場人物が抱えるそれぞれの思いが非常に鮮明に描かれている作品。
青春小説の代表作とも呼ばれ、200年には「第2回本屋大賞」を受賞。
2004年に発行された小説ではありますが、現在まで長く愛されている作品です。
青春小説といえば、甘酸っぱい描写をイメージされる方も多いですが、本作品は甘すぎず、爽やかに自分の高校生活を思い出させてくれ、大人になった今でも読みやすいのも魅力のひとつ。
一度は読むべき本だと太鼓判を押したいのは、過去には決して戻れないけど、あの頃後悔したことや言いたかったことを、大人になった今でも同じように後悔を繰り返していないか?という気持ちにさせられるから。
高校生活は人それぞれです。
ただ、高校生は大人になるちょっと手前で、「もう少ししたら立派な大人になれるはず」と、どこかで信じているのは、全ての人に共通していることではないでしょうか。
本作品は、そうした学生時代の自分を呼び起こし、あの頃の自分が思うなりたい自分になれているかと問われるような作品でもあります。
自分自身の手で未来を変えることの大切さを学べる一冊。
読み終わる頃には登場人物たちと一緒に80キロを歩き切ったような達成感を味わえるはず!
まだ読んだことがない方は、本作品でぜひ青春時代にタイムスリップしてみてください。