工藤:リモート通訳のメリット・デメリットは何かありますか?

川井:リモートはやりやすいことが多いのですが、最近増えてきているのが通訳者と一部の参加者がリモート参加のハイブリッドの会議です。ほとんどの参加者は同じ会議室にいるのですが、その部屋のマイクの状態によっては音声が聞こえづらいことがあり、非常に苦労します。 逆に参加者が全員オンラインの場合は、リモートの方が音質は抜群にいいです。声が耳に直接入ってきますし、音量も自分で調節できます。1人でいるので集中もできますし、移動がない分余裕もあるので、私はこの働き方が気に入っています。

工藤:複数名体制の時はリモートではパートナー同士のサポートが難しくないですか?

川井:よく知っているパートナーであれば、チャットで色々確認できたリはするのですが、現場案件のようにメモをすぐ出すようなサポートはリモートではなかなか難しいです。

工藤:最近の若い通訳者さんは同通をしながらチャットもすると聞きますし、時代が変わってきましたよね。同時通訳自体、聞きながら話すのでものすごい能力だと思いますが、さらにメモを取ってチャットの確認作業もしてマルチタスクがさらに求められるようになってきているんですね。

川井:私は同通をしながらチャットを確認することはできますが、返信はできません。同通をしながら返信もできるのはすごいと思います。

工藤:私は、オンサイトの時よりもリモートの方が会議数が増える傾向にある気がしています。リンクに入るだけなので、エグゼクティブの方も会議に参加しやすくなって通訳のニーズが増えているのではないでししょうか?ウィズコロナの時代、今後リモート案件はどうなると思いますか?

川井:これからもリモートはなくならないと思います。もしかしたら現場案件が今よりは増えるかもしれませんが、リモートは通訳者だけではなく参加者にとっても良い面がたくさんあると思うので、今後はリモートと対面の会議が半々ぐらいになるかもしれないですね。

できることを積み重ねていく
(画像=『HiCareer』より引用)

リモート通訳時のご自宅セットアップ

工藤:現在はフリーになられて5年ですよね。今後の展望はありますか?

川井:私はビジネスの分野が好きなので、このまま同じ方向性で続けていきたいと思っています。企業のビジネスはお互いに関連があったり、影響しあったりしているので、様々な業界のビジネスに触れることで多くの発見があります。この分野でさらに経験を増やしていきたいです。

工藤:ところで、川井さんはお客様やコーディネーターとのコミュニケーション能力がとても高いですよね。人によっては、この人と組みたくないというのがやはりあるんですね。調整するときにコーディネーターが割と苦労する点でもあります。でもそれをやってしまうと、結局仕事の幅が狭まってしまうんですよね。それはとても勿体ないことだと思っています。通訳は1人ではなかなかできない仕事ですので、人間力は大事な要素だと思います。 難しい方とも上手くやっていけるのは1つの才能だと思います。人とコミュニケーションするときにモットーとしていることはありますか?

川井:特にモットーはありませんが、あまり細かいことが気にならないのかもしれません。こだわりがある方であれば、特に抵抗なく合わせることもできますし、それでやりにくいと思ったことはありません。

工藤:健康管理のために何かやっていらっしゃることはありますか?

川井:睡眠はよく取っているとは思いますが、それぐらいです。仕事の時間と家のことをやっている時間、それぞれが全く違うので、お互いのストレス発散になっているのかもしれません。適度にリラックスする時間も取れていますし、あまりストレスは溜まっていないと思います。性格的なこともあるかと思いますが、例えば現場で予想外のことが発生したとしても、そこで騒いでも仕方ありませんし、それでストレスが溜まることはありません。毎回その場でできることを集中してやる、それだけです。

工藤:どんな通訳者でもなかなか言葉が降りてこなくて落ち込む日もあると思いますが、そういう時はどのように気持ちをスイッチされていますか?

川井:もちろん調子がいい時、悪い時はあります。失敗したとしても、もうそれは取り返せないですし、それをずっと引きずってしまうとその後のパフォーマンスにも影響を与えてしまうので、とりあえずその場では忘れるようにし、反省は案件が終わってからにします。全体としてのパフォーマンスが評価されるので、最初の15分で失敗したなと思っても、次の番で立て直せばいいわけです。 過去を変えることはできませんが、毎回、その時点からベストを尽くすことはできます。失敗してもここから、また失敗してもここから、という風に切り替えています。

工藤:仕事はトータルで評価されるって本当にそうですよね。体調にも左右されることもあるんでしょうか?

川井:体調もあるでしょうし、あとは理由がわからないけどなぜか調子がいい、調子が悪いということもあります。それは完全にコントロールできることではないので、誰にでもある出来不出来の波の差がなるべく小さくなるように、努力するしかないと思っています。前にクラスメートと、優秀な通訳者さんほどその波の上下が激しくなく、安定していて、さらにはこのラインは絶対に下回らないというパフォーマンスができるよね、と話していたのですが、まさにその通りだと感じています。

工藤:自分の癖なのですが、私は頭の中で事前にシミュレーションを沢山します。例えばスタッフと面接したりお客さんと打ち合わせしたりするときも、1回頭の中でシミュレーションしてから臨みます。こう言われた場合はこう言おうとか、こういう風にしたら、こうしようとか考えるのが好きなんです。川井さんは緊張しないコツとかってありますか?

川井:私は真逆で、その時考えようと思ってしまうタイプです。資料を読んでこういう内容を話す可能性があると思ったら、それは事前に勉強していきますが、こういう場合はこうしようと細かく考えることはありませんし、考えることが苦手と言ったほうが正しいかもしれません。緊張することもありますが、いざスタートとなったら、やるしかないという気持ちが勝ち、緊張を忘れてしまうことも多いです。

工藤:私は50歳になったらこうしようとか、60歳になったらこうしようとか、5年、10年先のことも考えてしまうタイプですが、川井さんは将来の計画を立てられていますか?

川井:私はあまり計画を立てません。留学も1年ぐらい行ってみようかなと急に決めましたし、初めての通訳の仕事も募集を見て急に決めました。本当はもう少し計画性を持った方がいいとは思っているんですけど。

工藤:川井さんには自分はぶれないという、何があっても大丈夫という強いものがあるんじゃないでしょうか? 今までお話を聞いていて、そこが川井さんの強さだし、人とのコミュニケーション能力、人間力の強さなんじゃないかと強く感じました。聞いた話だと私達の時代は100歳まで生きる人は15人に1人ぐらいだそうですが、今生まれた子供たちは、2人に1人が105歳まで生きるらしいんです。そうすると60歳で仕事を辞めるという選択ができなくなる。75歳ぐらいまで働かないともちろんお金は回らないですが、仕事の質はだいぶ変わってきていますよね。 何が重要かというと、学び続けるという姿勢です。例えばリモート通訳はやりませんって最初に言っていた人は、リモートの波に乗り遅れて仕事が減ってしまうということもあります。常に新しい知識を得ていかなきゃいけないと思っています。

川井:そうですね。私も新しいことに挑戦していきたいです。計画性がない分、その時の状況に合わせるタイプなので、リモートでの通訳対応にも最初から抵抗はありませんでした。ヘッドセットやPC、スマホなどマストなものは持っていますが、他の通訳者さんと比べて、私はグッズを持っていない方だと思います。リモートの対応場所も、寝室の棚の扉を開けると机みたいに使えるので、そこで対応しています。

工藤:普段からあまり物は持たれない方でしょうか?

川井:必要最低限のものだけ持つようにしています。不要なものはすぐ手放しますし、単語帳や写真のアルバムなどデータ化できるものはデータ化し、家の物を可能な限り減らしています。物が少ないと管理も楽ですし、効率的です。

工藤:私はため込むタイプですが、最近思うのは物が少ない人は生活が豊かだと思っています。最後に、これから通訳を目指される方に何かアドバイスをお願いできますか。

川井:通訳の仕事はとても楽しく、やりがいがあります。ずっと勉強が続く長い道のりなので、フルスピードで進む事が難しい時もあるかもしれません。そういう時はスピードを落としてもいいと思います。一番大切なのは、決してやめないということです。その時自分ができることを積み重ねていくことで、知識や経験がどんどんつながっていきます。無駄になる学びはありません。私も可能な限りこの仕事を続けていきたいと思っていますので、一緒に頑張っていきましょう!

できることを積み重ねていく
(画像=『HiCareer』より引用)


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