新型コロナウイルス感染症による環境変化や年々高まるEC需要で宅配便取扱個数が急増。宅配ボックスの設置や置き配など配達方法も工夫されていますが、「宅配ボックスが満杯で空きがない」「配送員を十分に確保できない」などの課題も。そこで、荷物の伝票番号をセキュリティ解錠キーとして活用する画期的な宅配システム「Pabbit」が発表されたと聞き、開発秘話とともにデモ機を体験してきました。

宅配便を取り巻く環境が時代とともに変化

近年、新型コロナウイルス感染症拡⼤による環境変化を受けて、ネットショッピングの利⽤機会が年々増加。国土交通省の発表では、2020年の宅配便取扱個数は48億3647万個で、前年から5億1298万個(約11.9%)も増加しています。今回お話を伺った、株式会社PacPort 営業部セールスマネージャー 大﨑直人さんによると、この数字には米・シアトルに本拠地を置き、国内でも広く利用されているアマゾンは含んでいないため、実数はさらにあるのだそう。

マンションの共⽤スペースにおける宅配ボックスの設置や敷地内への置き配など、配達方法も様々な工夫がなされていますが、特にオートロック付きマンションでは「個人専用のボックスでないため、荷物が取り出されるまで時間がかかって宅配ボックスの空きがない」「共用部への置き配は防犯上難しい」などの理由から再配達にならざるを得ない状況です。

また、配送業者の人手不足対策や配送時のCO2排出量抑制の面からも改善が急務となっています。

構想から4年、ついに宅配は荷物認証の時代に

【レポ】荷物の伝票番号でオートロックを解錠!日本初の宅配システム「Pabbit」を体験
(画像=『ARETTO』より引用)

その解決の一助として、荷物ごとに割り振られた伝票番号(バーコード)をセキュリティ解錠キーとして活用する宅配システム「Pabbit」が発表されました。開発したのは、インターホン最大手のアイホンと宅配ソリューションを手掛けるPacPort。

「Pabbit」は、オートロック付きマンションのエントランスインターホンで、配送業者が荷物の伝票番号を認証キーとして解錠できるため、居住者の不在時でも⼊館が可能となり、各階・各⼾専⽤宅配ボックスまで荷物を届けることを実現しています。大﨑さんによると、入館可能な配送業者や宅配ボックスの数は建物の管理者やスペースによってアレンジできるそうで、居住者にとっては荷物を24時間受け取れるようになるメリットも。

不在時に届けてくれるのは便利な反面、セキュリティが心配になりますが、配達員がエントランスインターホンを解錠する際、それぞれの配送業者のサーバーに荷物の伝票番号の有効性や配送中の状態であるかの確認を自動的に行うため、配達員のなりすましや誤配送を防ぐ⾼いセキュリティも実現しています。

「Pabbit」は、日本の宅配サービスにおける”ラストワンマイル”問題を解決したいとの想いのもと、2018年の構想からおよそ4年の年月を経て今回の実装に至ったそう。

「Pabbit」によって配送のストレスから解放

【レポ】荷物の伝票番号でオートロックを解錠!日本初の宅配システム「Pabbit」を体験
(画像=『ARETTO』より引用)

エントランスインターホンで荷物の伝票番号を認証して通⾏キーとするシステムとして、⽇本初となる「Pabbit」。

従来の“ヒト”(宅配員)認証から“モノ”(荷物)認証へと配送の仕組みを大きく転換することで、荷物を届ける配送業者にとっても、荷物を受け取る居住者にとっても、便利で優しいシステムを提供できるといいます。

これまでオートロック付きマンションに荷物を届ける際、配送業者は人員確保から入館手続き、独⾃のシステムや端末の開発など、コストや手間が発生していました。「Pabbit」は、配送業者ごとのシステム開発も不要で、且つ高いセキュリティを担保しつつフロアセキュリティがかかっている物件でもスムーズな階間移動ができるため、配達員の負担軽減につながります。居住者の在不在にかかわらず荷物によって認証・入館できるため、再配達の削減も期待されます。

居住者にとっては、数時間ごとの時間指定はできるものの、いつ届くのか分からず待ち時間や行動が制限されていたストレスから解放されるメリットが。コロナ禍においては非接触・非対面の配送は心的負担が緩和される、うれしいポイントです。

一方で再配達を依頼する場合、追加配送料がかかるわけではないため、気軽に依頼をしてしまっていたという人も少なくないのでは?実際に再配達でも受け取りが完了せず、再々配達になってしまうケースも生じているそうで、その度にトラックでの輸送によるCO2排出や、配達員へ負担がかかっていることを受け取り側として忘れずにいたいですね。