Yさんには、フィードバックを基に試訳を修正していただきました。すると、ぐんと読みやすくなりました。これなら編集者さんにも読んでもらうことができるでしょう。

これで持ち込みの用意は整ったのですが、Yさんはさらに2章分の試訳も用意してくれたのです。その理由は、原書の構成に関係しています。本書で扱われている2つのテーマがあり、第2部の第5章から第9章でひとつ目のテーマを、第3部の第10章から第16章でふたつ目のテーマを扱っているのです。そこでYさんは、第2部と第3部から、それぞれ1章ずつ準備してくれたのでした。こうすることで全体像もつかみやすくなりますし、5章分の試訳の用意があることは、出版社側にとっての安心材料になるでしょう。

持ち込み先については、旧版の翻訳書が30年ほど前にA社から出ているため、まずはA社にあたってみることにしました。とはいえ当時の担当編集者さんはおそらくもういらっしゃらないでしょうし、A社の出版物の傾向も当時からはかなり変わっているようです。ただ、医師が著者の作品も刊行されているので、医師であるYさんは、出版社からすれば著者候補や作品の監修を依頼できるかもしれない相手になります。企画を検討してもらえる見込みはあるのではないでしょうか。

A社の公式サイトにお問い合わせ窓口があるので、そこからアプローチすることにしました。Yさんは最初の印象が極めて重要であると考え、「ファーストコンタクトとしては、いきなりできるだけ多くの情報を盛り込んだほうがよいのか、それとも、最初は手短に挨拶程度にしておいたほうがよいのか」と悩みました。

A社のお問い合わせフォームには、2000文字まで入力できるようなのですが、「最初からあまり多くの内容を詰め込んでしまうのは担当者さまを戸惑わせることにもなるような気がします」というYさん。自分なりの文章を考えたので、無礼な印象や、情報量の不足など、何か問題がないか確認してほしいとご依頼をいただきました。