「株式投資型クラウドファンディング」という投資方法を知っているだろうか。これまで一般の個人投資家はなかなかアクセスができなかった未上場株式へ投資できる方法として、近年注目を集めている。
そんな株式投資型クラウドファンディングは、通常の上場株式投資と比べてどのようなメリットやデメリットがあるのだろうか。また、案件を見るときのポイントには何が挙げられるのだろうか。株式投資型クラウドファンディングのプラットフォーマーである株式会社ユニコーンの代表取締役最高経営責任者 兼 最高執行責任者の安田次郎氏に話を聞いた。(聞き手:菅野陽平)
学習院大学法学部卒 ペンシルベニア大ロースクール法学修士取得
国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)、クレディ・スイス、リーマン・ブラザーズ、野村證券にて企業の資金調達に関する業務に従事。2019年2月より株式会社ユニコーンの代表取締役社長に就任。
コーポレートサイト:ユニコーン
学習院大学法学部卒 ペンシルベニア大ロースクール法学修士取得
国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)、クレディ・スイス、リーマン・ブラザーズ、野村證券にて企業の資金調達に関する業務に従事。2019年2月より株式会社ユニコーンの代表取締役社長に就任。
コーポレートサイト:ユニコーン
10倍や20倍といったリターンをあげることも可能
――株式投資型クラウドファンディングとは、どのような投資方法でしょうか?
一言で言えば「未上場株式への投資」です。
インターネットを通じて、多くの人が少額の資金を出資し、未上場会社の株式に投資することのできる仕組みが「株式投資型クラウドファンディング」です。
クラウドファンディングを知っている人は多いと思います。
「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを通じて不特定多数の人から資金を調達する」ことを指します。
株式投資型クラウドファンディングはクラウドファンディングのひとつです。
クラウドファンディングにはいくつかの種類がありますが、金融商品にあたるのが「ファンド型」「貸付(融資)型」「株式投資型」の3つです。
この3つは金融商品取引法に沿った形で投資家へ提供されています。
なかでも私たちが取り扱っている株式投資型クラウドファンディングは、資金を集めたい非上場の事業会社が株式を発行し、個人投資家はその株式を取得します。
私たちのようなプラットフォーマーと呼ばれる運営会社は、事業会社と個人投資家の仲介は行いますが、私たちが主となって投資したり、株式を預かったりするわけではありません。
個人投資家は直接、事業会社の株主になります。
基本的な考え方は、通常の上場株式投資と全く同じで、取得した株式の価値が上がれば利益がでますし、残念ながら価値が下がってしまえば損失がでます。
――通常の上場株式投資と比べると、株式投資型クラウドファンディングのメリットにはどのような点が挙げられますか?
期待リターンの大きさだと思います。
通常の上場株式投資は、可能性がゼロではないですが、短期間で大きなリターンをあげることは難しいでしょう。
例外はIPO投資です。
IPO株を購入して、上場後に売却する方法であれば、必ず利益がでるわけではありませんが、「2週間で50%のリターン」といった「短期間で大きなリターンをあげること」は十分達成が可能です。
ただし、IPO株は人気が高いため、抽選になるケースが多く、なかなか手に入りにくいのが現状です。
株式投資型クラウドファンディングは、IPOよりもさらに前の段階で株式を購入する投資です。
例えば、創業してまだ1年や2年の会社の株式を購入し、数年の保有期間を経て、見事その会社がIPOすれば、かなり大きなリターンを得ることができます。
10倍や20倍といったリターンをあげることも可能でしょう。
なお、案件ごとの最低投資金額は10万円前後であることが多く、上場株式に比べて、分散投資がしやすいことも特徴です。
「ハイリスク・ハイリターン」であることに注意
――デメリットにはどのような点が挙げられますか?
必ずしもすべての会社が順調に成長するわけではないことが挙げられます。
株式投資型クラウドファンディングで資金調達を行う会社のほとんどはスタートアップ企業ですので、事業がうまくいかず、泣かず飛ばずになる可能性はもちろん、破綻してしまう可能性は上場会社に比べて相対的に高いと言えます。
破綻してしまった場合は、残余財産があれば別ですが、基本的に投資元本は全損(1円も戻ってこない)と考えておいた方が良いでしょう。
また、上場会社は必ず監査法人が入って決算数字などの正確性をチェックしますが、スタートアップ企業で監査法人が入っていることはほとんどありません。
そのため、事業活動や決算資料に対する信頼性は、上場会社と比べて低いと言えます。
流動性も大きく異なります。
上場株式であれば、大半のケースは売却したい時に証券取引所で売却することができますが、上場株式には流通市場がほとんど存在しません。
著しく流動性が低いことにも注意が必要です。
したがって、少なくとも3~5年は保有するという中長期のスタンスで投資することが重要です。
――株式投資型クラウドファンディングは「ハイリスク・ハイリターン」の投資商品ということですね。これまで、株式投資型クラウドファンディングで資金調達した企業がIPOした事例はあるのでしょうか?
日本においては、まだIPOの事例はありません。
一般的に、事業がどんなに順調でも起業からIPOまでは5〜6年かかるものです。
株式投資型クラウドファンディングの法制度が整備され、第1号が募集されたのが2017年5月ですので、来年(2022年)の5月で丸5年ですね。
したがって、来年あたりからはIPO事例が出てくるかもしれません。
一方で、当社ではなく競合他社の話ですが、バイアウト(M&A)による利益確保の事例は数社あります。
まだ片手で収まる数ですが、昨年(2020年)あたりから事例が出てきました。
ただし、リターンは20%や30%といった場合が多いようです。やはり、10倍や20倍を狙うには、IPOにたどり着くことが必要でしょう。
ここまでは日本の話でしたが、海外ではすでにIPOした事例があります。
なかには10倍近いリターンを得た案件もあります。
また、株式投資型クラウドファンディングの次の資金調達ラウンドで、既存株主が新しい株主に株式を売却することによって、投資家が利益を確保したケースもあります。
――10倍近いリターンとは夢がありますね。案件の募集ページを見るときは、どのようなことに注目すれば良いでしょうか?
「どういったビジネスをしているのか」はもちろん、どのような市場で戦っているのか、競合他社に打ち勝つ戦略があるのか、競争優位性は何か、社長の経歴や人となり、などを見て頂きたいと思います。
特に、スタートアップ企業の場合は、経営者が非常に重要です。当社では、テキスト文で紹介するだけではなく、できる限り説明動画もご用意していますので、動画もご覧頂きたいと思います。
最終的には、「この会社を応援したい」という気持ちになった案件に投資をするのが良いと思います。
先ほど申し上げたように、うまくイグジットができるまで、少なくとも数年がかかります。
株主になることで、自分も調達企業と一緒に成長していきたいと感じた案件に大切なお金を投じて頂きたいですね。
複数の案件に分散投資することがおすすめ
――どのような会社が株式投資型クラウドファンディングで資金調達することが多いのでしょうか?
業種でいえば、やはりIT系が多いですね。
IT系のほうが人気化しやすい傾向もあります。
マーケティング要素を期待して、B2C系の会社が株式投資型クラウドファンディングを実施するケースもあります。
当社の過去案件で言えば、ソーシャルクッキングサービス「スナップディッシュ」を展開しているヴァズ株式会社などがB2C系案件です。
読者のなかにも、スナップディッシュのユーザーさんはいらっしゃるのではないでしょうか。
IT系が多いとはいえ、製造業やサービス業がないわけではなく、業種は多種多様です。
経営者は若手が多いかと思いきや、70歳を超えたシニア層の方もいらっしゃいます。
――御社で株式投資型クラウドファンディングを始めるにはどうすれば良いのでしょうか?
まず、当社に会員登録していただく必要があります。
先ほど仰って頂いたように、株式投資型クラウドファンディングは「ハイリスク・ハイリターン」の投資商品ですから、誰でも会員になれるわけではなく、審査に通った方のみ会員とさせて頂いております。
審査通過後に、ご登録頂いた住所にパスワードを送付しますので、インターネットでログインして頂き、その後、案件に申し込むといった流れです。
なお、株式投資型クラウドファンディングは、法律で「1銘柄への年間投資金額は50万円まで」と定められています。
そのため、1銘柄にたくさんのお金を投資することはできません。
いずれにせよ、1社に集中投資するのはリスク管理上望ましいことではありませんので、複数の案件に分散投資すると良いでしょう。
例えば、50万円を株式投資型クラウドファンディングに投資しようとする場合は、1銘柄に50万円を投じるのではなく、10万円ずつ5銘柄に投資するといったイメージです。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
重要なことは、個人投資家に魅力的な案件を紹介していくこと、そして、調達企業の成長のサポートをすることです。
「お金を集めたら終わり」ではなく、「お金を集めたところがスタート」だと思っています。
調達企業が成長していくことで、個人投資家にも経済的リターンをお返しすることができます。
そのような良い循環を作ることを早く実現したいですね。
そうすることによって、株式投資型クラウドファンディング業界も拡大していくと考えています。
文・fuelle編集部
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