今週の一冊

当たり前を疑ってみる
(画像=『HiCareer』より引用)

「口下手な人は知らない話し方の極意 認知科学で『話術』を磨く」野村亮太著、集英社新書、2016年

最近、落語に凝っています。以前は「何となく難しそう」「日本のジョークよりも海外のコメディの方が良いな」と思っていました。が、一度ハマるやその奥深さに気づかされ、今では日本テレビの「笑点」は欠かさず視聴。独演会や寄席イベントもチェックするようになっています。

特に会場で実際に味わう醍醐味は、何と言っても「場の一体感」。コロナで座席制限があるものの、同じ空間で楽しい話題に誰もが笑える。この体験はこうしたご時世だからこそ、よりありがたく感じられます。

今回ご紹介するのは、認知科学者の野村氏が記された一冊。氏のプロフィールを読むと、研究領域は「落語の間(ま)、噺家の熟達化」とあります。そうした観点から記されている書籍です。

立ち方や目の配り方、間(ま)のとり方など、人前で話す人にとって有益な情報が本書には満載。さらに通訳者と噺家の共通点もわかりました。たとえば、寄席では客席が暗くならないため、聴衆の反応がよくわかるという部分は、商談通訳でも当てはまります。そうした会場で噺家が意識しているのは、観客の状態を察知したうえで、「自分が客からどのように見えているのかを判断し、最も効果的な話し方を選び出す」(p26-27)ことなのだそうです。通訳者自身、オーディエンス第一で訳語を選ぶべきだと改めて感じました。

では、なぜ落語家は聴衆の様子に合わせて話せるのでしょうか?野村氏によれば、「噺家がスーパーコンピュータ並の演算能力を持っている可能性」(p28)があるからだそうです。こうしたことを人工知能にやらせるには、まだまだ労力が必要とのことでした。

AI通訳が目覚ましい発展を遂げる昨今、通訳者も「スーパーコンピュータ並の演算能力」を有していると信じ、目の前の仕事を大切にしていきたいと思ったのでした。


提供・HiCareer(通訳者・翻訳者へのインタビュー記事や英語学習の情報が満載!)

【こちらの記事も読まれています】
思わず共感する40代独身女性あるある
100均グッズで宅飲みをワンランクアップ
生活費月100万円超「ご近所セレブ」の実態
旅行のお土産、いくらが適切?
あぁ、癒やされる。飼いやすいペット5選