買い物依存症は自分の意思ではやめられない
買い物依存症は脳の報酬系が機能不全を起こした病気です。過剰な買い物を自分の意思の力でやめることはできません。癌の患者さんに、意思の力で治るとか、根性や気合で治ると言うことはなく、正しい治療を受けて病気を克服しようとするのと同じく、買い物依存症も意思や根性ではどうにもなりません。正しい治療が必要なのです。
我慢してもやめられない
しばらく買い物を我慢すれば、そのうち自然に落ち着くだろうと考える人は多いのですが、買い物依存症は我慢ではやめられないのです。家計簿をつけたり、キャッシュカードを破棄したり、他に趣味となるものを探してみたり、物理的に買い物を我慢しようと試みることがあるでしょう。一時的には我慢ができても、やがて再発しもっとひどい状態に陥ったり、別の依存症へとスライドしていくことがとても多いのです。
ドーパミンの作用は強烈であり強力です。マウスの実験でも、ドーパミンが出るように仕組まれたレバーを叩くネズミは寝食を忘れて叩き続けます。しかもネズミは、電流を仕掛けた網の上で、足が真っ黒に焦げて動けなくなるまで叩くのを辞めなかったのです。子供が生まれたばかりの親ネズミは、子供を放置してレバーを叩き続けます。生物としての本能も機能しないようになるくらいドーパミンは強力なので、我慢でやめられるようなものではないのです。それなのに自分は我慢ができないダメ人間だと、自分を責めてしまうことも多いでしょう。そうした自己否定の辛さが、更に依存を深めていく原因のひとつになるのです。
表面的に行動を制限しても、買い物を求め続ける原因からのアプローチをしなければ回復は困難です。借金がある場合、債務整理をすれば新たにやり直せるだろうと、安易に経済的問題を片付けてはいけないのです。買い物依存症が回復していないために、しばらくするとまたお金を工面するようになり、以前より酷い状況になる例はとても多いです。そうするとますます深く自分を傷つけてしまうことになります。経済的な問題はいったん棚上げして、まずは支援先につながってください。
ひとりではやめられない
買い物依存症は1人ではやめられない病気です。依存症は孤独の病と言われ、身近な家族とさえ理解し合えないような寂しさを抱えて生きてきた人におこりやすい病です。
回復のためにはこれ以上孤独になることは避けなければなりません。買い物依存症者は、誰にも言えず1人で悩んだり、誰かに相談してもその苦しみが理解されにくく絶望したりし、心理的孤立を深めていきます。深まる寂しさは病気の際にはとても耐え難いもので、寂しさから逃れるためにますます依存を手放せなくなってしまいます。
依存症は進行性の病気なので、たちまち重症化していきます。大切なのは、同じ問題を抱える仲間たちと共に回復に向かうことです。仲間たちと正直に自分の体験や気持ちを打ち明けあい、話をしたり聞いたりすることで、共感や理解という癒やしが生まれます。そして仲間の中で次第に自分と向き合えるようになり、深い洞察を得て根本から変容し依存症からの回復に向かうのです。