なぜ買い物がやめられないの?
なぜ買い物がやめられないのか、その原因を次の4つの視点から考えます。
- 脳内物質の作用
- うつ、発達障害、など一次的原因により引き起こされる
- 満たされない心の隙間を埋めるため
- 抱えてきた生き辛さの自己治療としての依存
脳内物質ドーパミン
依存症は、脳内物質のドーパミンが過剰に分泌することが繰り返され、脳内の報酬系と呼ばれる神経回路が壊れてしまった状態です。買い物をしたときに得られる快楽・快感はドーパミンという快楽ホルモンが司っています。ドーパミンは大量に分泌されると、食事や睡眠という生きていく上でもっとも大切な生理的欲求さえも抑え込んでしまうほど強力です。また、快楽というご褒美をを予測・期待するときにもドーパミンは放出されるため、買い物をしていなくても、パソコンを見ただけでドーパミンが放出し、ネットショッピングをしている時と同じく高揚している状態になります。ドーパミンの分泌の回数や量が増えると耐性ができてきます。そうすると同じ程度の快楽行為ではドーパミンがそれほど分泌されず、もっと強い刺激が必要になるのです。
同時にドーパミンの力が、本来生きていく上で必要なこと、大切なもの、理性なども打ち消してしまうため、明らかに不合理だとわかっていてもやめられない状態になってしまいます。ドーパミンが切れると禁断症状が引き起こされ、その苦痛は耐え難いほどのものなので我慢するのは非常に困難です。買い物依存症の場合主に強いイライラやそわそわ、不快感などの精神的な禁断症状がおこります。買い物依存を辞めたいという自分の意思とは裏腹に、また度を超えた買い物に手を出さなければならなくなるのです。このような脳の回路・作用はみんな持っているもので、依存症は誰にでもおこりうる身近な病気なのです。
参考: 東京大学|ドーパミンの脳内報酬作用機構を解明
病気が隠れている
依存症は精神疾患や障害の二次障害や合併として現れることがあります。発達障害、うつ病、双極性障害、不安神経症、パーソナリティー障害、統合失調症、認知症などの原疾患が隠れている場合もあります。その原疾患のひとつの症状として依存症がみられることがあるのです。それを見分けるためにも、まず精神科受診をすすめるケースが多いといえます。その場合、投薬などの原疾患の治療で症状が落ち着くこともあります。
ストレス?満たされないこころ?
ストレス発散にパーッと買い物をするという話はよく聞くことでしょう。果たしてそれだけでしょうか。厚生労働省によると、ストレスとは「外部からの刺激によって、身体に生じた反応。外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のこと」と定義されています。ストレスの原因としては、人間関係のいざこざや、仕事の負荷、暑さ寒さなどの嫌なことだけでなく、クリスマスや結婚出産、個人的な輝かしい成功などの喜ばしいことも含まれます。なんらかのストレス刺激が加わって、精神的や身体的に緊張状態になりさまざまな不調がでてくるため、人間はストレス発散としてその緊張をほぐすための行動をおこします。
満たされないこころとは、欲求が満たされないと感じるフラストレーションがある心の状態です。欲求には、食欲や性欲のように本能的な生理的欲求や安全欲求、承認欲求や共存欲求の愛と所属の欲求、自分の持つ能力や可能性を発揮したい自己実現欲求などがあります。満たされることのない欲求は、解消しない限り消えることはなく、次第に肥大化し、自分や他人に対して破壊的に作用することとなります。心が満たされていない状態だと、日常的に虚しさや寂しさがあり、その寂しさや虚しさを依存によって埋めようとします。しかし依存では一次的に解消されたように感じても、根本的な問題は何も解決していないため、何度も何度も繰り返すこととなるのです。
抱えてきた生きづらさ
依存症になった人の多くは生きづらさを抱えて生きてきました。その原因にアダルトチルドレンという、子供時代を機能不全家庭の中で過ごしてきた背景があります。アダルトチルドレンの主な特徴として、次の6つがあげられます。
- 自己評価が低く自分に自信を持てない
- 人を信じられない
- 本音を言えない
- 見すてられる不安が強い
- 孤独でさみしい
- 自分を大切にできない(自分は親からさえ受け入れられていない、他人から 受け入れられる価値がない、と誤解している。)
参考:依存症に対する正しい理解と 必要とされる支援について
依存症になったり、依存症者のパートナーになったり、強迫的な問題を持つ人を見つけて、自分の病んだ自暴自棄の欲求を満たそうとするという特徴もあります。また、駆り立てられるものを常に追い求め、刺激に嗜癖する傾向もあります。特に子供時代に感じることのできなかった愛が欲しくて、代替行為として買い物に依存します。それは自己治療の側面があると言われ、本人が生きていくために必要だった経過として受け入れられ、買い物依存症からの回復を目指していくのです。