スパイス料理研究家&スパイス専門店代表取締役として幅広く活動し、メディアにも引っ張りだこの印度カリー子さん。「将来の夢も希望もない本当につまらない人間」だったというカリー子さんを強く惹きつけ動かした“スパイスの魅力”についてうかがった前回に続き、今回もスパイスへの飽くなき情熱を語ってもらいました。
印度カリー子さん
レシピはたくさんの失敗から生まれている
――カリー子さんは『印度カリー子のスパイススープ』(世界文化社刊)をはじめレシピ本をたくさん出版されていますが、スパイスは数多くの種類がありますし、スパイスと食材には無限の組み合わせがありますよね。「この食材にはこのスパイスが合う」という組み合わせはどう見つけているんですか?
印度カリー子さん(以下、カリー子):すべて経験、トライ&エラーですね。成功して覚えるという経験もあるんですけど、人間が一番ズバッと物事を覚えるのって、失敗して「これはしてはいけない」という方法をたくさん知ったときだと思うんです。一発目から成功したとしても、「これが本当に成功かどうかわからない」という感覚になってしまうんですけど、「これはしてはいけない」という道がたくさんできると、後に残された道はもう成功しかないですから。
写真はイメージです
――「これとこれは相性が悪い」という失敗を重ねて、相性のいいものを導き出してきたんですね。
カリー子:そうですね。失敗例の例えで言うと、野菜とスパイスでおいしいカレーを作ろうと「たくさんの」スパイスを調合してみたけど、なんだかまとまりが悪く野菜の香りもしないまずいカレーができ上がったとします。これは「スパイスをたくさん入れすぎた」という失敗になります。となると、「たくさんスパイスを加えないほうがおいしくなくならないんじゃないか」という考えになりますよね。そして、実際にスパイスを減らして作ってみたら、スパイスをたくさん加えて作ったときよりもまとまりができておいしくなった。 こうして、「すなわち野菜にはスパイスをたくさん合わせるよりも少しのスパイスを加えるだけのほうがおいしく仕上がるんだ」と知るわけです。
毎日の食事で試行錯誤を積み重ねられる楽しさ
――「スパイスを減らしてみよう」となった場合は、一種類ずつ減らして実験していくんですか?
カリー子:そうですね。実験というと途方もない感じがしますけど、毎日の食事の中でできることですから。
――毎日の食事の中で試行錯誤を続けてきたと。
カリー子:続けてきました。一日3回実験することができるので、365日あれば1000回を超えますから、かなりの回数になりますよね。
――そんな回数を楽しみながらこなしてこられたのは、スパイスカレーがカリー子さんにとって魅力的で飽きない題材だからこそですよね。
カリー子:はい。私はカレー作りを始めてまだ6年目なんですけど、よく「20年30年研究している人よりも開発が早いですね」って言われるんです。でも、ぜんぜん早いということはなくて、試行するチャンスが無限にある中で、私はそれを短期間でやったというだけなんですよ。