デジタルと融合する通訳を!
(画像=『HiCareer』より引用)

工藤:今はオンライン通訳が多いですよね?

鎌田:そうですね。9割以上がオンライン通訳のご依頼です。自宅にはマイクとイヤホンとPCとデバイス何台か購入しました。また自宅に通訳用のスペースを確保し、スタジオのように席から手がすぐに届く場所にすべて揃えてあります。

デジタルと融合する通訳を!
(画像=『HiCareer』より引用)

※ご自宅のリモート通訳セットアップ
バックアップ用のマイク付きイヤホンとケーブル類は、 万が一のために常にお手元に置くようにされていらっしゃるとのことです。

工藤:現場での通訳とリモート通訳ではどんな変化がありましたか?

鎌田:メリットとしては皆さんそうだと思いますが、音声が耳にクリアに入ってくる点は本当に助かっています。移動時間がないので、今まで以上に多くの案件を受けることができます。デメリットは人との出会いが少なくなって、通訳者が今まで以上に影の存在になってしまう点です。パートナーと組んで通訳をする場合は、現場ではメモを取ってフォローしあっていましたが、リモートではそれができなくなりました。現場での通訳者同士の連帯感や暗黙の了解みたいなものがなくなり、無機質な感じになりがちなので、それは残念だと思います。

工藤:これから挑戦したい分野はありますか?

鎌田:メタバースでしょうか?

工藤:メタバース?まだ漠然とした定義ですよね?

鎌田:そうですね。近い将来、雇用も人の交流も仮想空間の中になるかも知れません。現実と仮想空間がどんどん融合して、自分のアバターがその世界に入って、現実の世界を仮想空間で再現するんです。

工藤:仕事も、スポーツも恋愛も、全部仮想空間になる時代が来るかもしれないということですね。DX時代を生き残るには、通訳者もデジタルを有効活用していった方がいいですね。

鎌田:まさにその通りで、どんどんデバイスやツールを活用するべきです。CAI(Computer Assisted Interpretation)という言葉がありますが、今は全部機械によって置き換わるところまではいっていないと思います。ただスピーカーの声を音声認識して文章化し、そのままサイトラしていくとか、全部使えなくても数字を拾うことはできます。あるいは自分の勉強用にオンラインのツールを活用することができます。これからもっと通訳者の価値は変化すると思います。今までの伝統的な通訳形態は続けながらも、Z世代と言われる人達が活躍する環境を支えられるような通訳者になりたい。これから向かっていく時代の中でも、通訳者が貴重な存在になっていけるように、従来のやり方に固執せず新しいことにどんどんトライしたいと思っています。

工藤:まさに変化するものだけが生き残るということですね。翻訳業界では機械翻訳が非常に浸透してきました。同様にこれからは通訳の世界もデジタルを活用する時代だということですね。

鎌田:ゼロイチではないと思います。デジタルを取り入れつつ、機械ではない人間が訳出している言葉の温かみがあるアウトプットも大事です。どんな時代になっても人の思いを伝えることは変わらないはずです。デジタルを否定するのではなく、自分と融合させながら、自分の価値を高めていくことができると思います。

工藤:私たちエージェントしてもそうありたいと思います。どんなにデジタルの時代になっても最後は人ですよね。

鎌田:ローカライズ翻訳の世界では、AIをベースにしたプラットフォームで事業をしています。一度機械翻訳にかけるのは当たり前の世界なので、機械翻訳レベルの翻訳しかできない翻訳者は淘汰されています。機械翻訳がベースなので、それ以下のラインの人はいらなくなるということです。ただ企業はそれ以上の品質を求めていますので、そこを埋めるのは人であり、優秀な編集者が活躍しています。きっと通訳もそうなると思っています。通訳者が言葉に込められた思いを伝えることによって、相手の心に響きます。それはAIにはできないことです。

工藤:これからの時代に求められる通訳者は、人と人の繋がりを大事にしながらも、デジタルと融合し自分の価値を高めていくことですね。

鎌田:私はアナログとデジタルの合間の世代です。もっと若い世代はよりデジタルネイティブなので、吸収するスピードが全然違います。例えばオンライン会議で複数名の通訳者と組んでいる時は、通訳者同士のコミュニケーションはチャットになりますよね?ただチャットの画面を見ながら同時通訳をするのは非常に難しい。また通訳しながらチャットに書き込むこともできません。でも若い世代の通訳者は通訳しながらチャットができたりする訳です。世代の違いを感じました。だからこそ、自分もデジタルを上手に活用していきたいと思います。

デジタルと融合する通訳を!
(画像=『HiCareer』より引用)

工藤:鎌田さんは紆余曲折して、フリーランスの通訳者になられいまでは大活躍されていますが、この仕事を選んでよかったですか?

鎌田:はい、今は毎日が幸せです。今までも人に恵まれ、貴重な経験を積むことができました。感謝しかありません。これからもずっと通訳を続けて行きたいと思っています。後はいつか小説を書いてみたいですね。通訳者の仲間は本当に面白くて素敵な人ばかりで、現場も面白いことがいっぱいあるし、いつかそういった内容の本を書きたいと思っています。

工藤:素晴らしい夢ですね。最後に将来通訳を目指している人にメッセージをお願いします。

鎌田:可能性は本当に無限に広がっています。スキルを磨いたり、通訳学校に通ったり、OJTで勉強することはもちろん必要です。先輩のアウトプットを聞いてその人に弟子入りするぐらいの勢いでシャドーイングしたり、その人を常にイメージしながら勉強するのもいいと思います。人と人の繋がりの中に学びがあり、より良い通訳や訳出ができることを忘れてはいけないと思っています。最近よく耳にする言葉ですが、共に作り上げていく共創という気持ちが大事だと思っています。通訳者もチームの一員としてその一端を担っています。機会があったら仕事が終わった後、笑顔を向けるだけでもいいですし、元気よく挨拶するだけでもいいと思います。そこで自分の中でもエネルギーが生まれてくるし、共創している意識が芽生えてきて、アウトプットが違ってくると思います。

工藤:鎌田さんがクライアントからリクエストが多いのもそういった姿勢ですね。同じ訳をしていても、心の中に共創という気持ちがあると、違ってきますね。本日はありがとうございました。

デジタルと融合する通訳を!
(画像=『HiCareer』より引用)


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