コロナ禍にアルバムを発表した理由&伝えたいメッセージ

ーーコロナ禍でパンデミックの影響などもあり、ツアーやプロモを行うのが困難なこの時期に、なぜアルバムを発表しようと考えたのですか?

マーティン:理由は2つあって、まず1つ目はAREA21だから2021年にリリースしたかったということ。2つ目はコロナ禍でいろんな面で制約を受け、人間らしい交流が減ってしまった。人間同士の触れ合いって絶対に必要だし、僕たちの力で少しでもみんなを元気づけれないかと考えたんだ。

あと、みんながスマホと睨めっこばかりして、SNSなんかで他人と比較ばかりしているから、僕たちがエイリアンとなり伝えたかったんだ。見映えなんてどうでもよくて、ひとりひとりがユニークで、そのままでスペシャルだってね。エイリアンにとっては、スマホばっかり眺めているのは理解できないし、国境がなぜ存在するかも謎なんだよ。コロナ禍でみんなの意見がいっそう分断されていることもある。

だから確かにコロナ禍ではプロモも容易じゃないし、人々が求める音楽もコロナ禍以前の懐かしい音楽に戻る傾向があるようだけど、僕らはサウンド的にもメッセージ的にもみんなの元に届けるには、これが正しいタイミングだと考えたんだ。

個々の活動とユニット活動の違い

ーーマーティン・ギャリックスさんとメイジャーさんはソロとしても活躍してきていますが、ソロでの音楽と、今回のユニットとしての作品作りの違いを教えていただけますか?

マーティン:メイジャーと一緒にやるときはルールがないんだ。部屋の中を駆けずり回ったり、踊ったり、カウチの上で飛び跳ねたり。ギターを持ち出してジャム・セッションをやったり。旅行中にもいっぱい曲を作ったかな。僕にとってこのプロジェクトが違っているのは、考えすぎないで、感じるがままにやっていることだと思う。

マーティン・ギャリックスとしてのセッションではスタジオに入る前に、どういうサウンドにしたいのか、何をゴールに定めるのかなど、成し遂げたい目標が決まっている。コラボする相手の音楽をしっかり聴き込んでおいたり、その相手のサウンドや歌に僕としては何をプラスできるのかなど、ついつい考えすぎてしまうんだ。事前に分析して、セッションに入るまでに計画、目標、アイデアなどが決まっている。でもAREA21のセッションでは、一緒に長くやってるせいかもしれないけど、何も考えないで制作できる。そこが凄く楽しいところなんだ。

メイジャー:僕も同じだね。マーティンの言ってくれた通りだよ。

コンセプトが「エイリアン」になった理由

ーーこのプロジェクトのコンセプトである、宇宙を旅していたエイリアンが地球に不時着、というのを思いついたのはどちらなんですか?

マーティン:2人で一緒に考えたんだ。前に使っていた僕のスタジオが宇宙船みたいなデザインで21階にあったからAREA21という名を付けたんだ。それにデビュー曲が「Spaceships」だったから、“それなら僕たちはエイリアンになっちゃおう”と考えて、エイリアンの絵を描いて、以来そのコンセプトなんだ。

メイジャー:僕にとっては音楽って、いつも他の惑星から聴こえてくるような気がしているから。だからエイリアンによる音楽は、ごく自然なことなんだ。

アルバム名は"ノリ"でつけた!?

ーーアルバムのタイトルに『グレイテスト・ヒッツ Vol. 1』と付けた理由は、“地球上のすばらしいアルバムの多くに付けられているタイトルだから”とのこと。おもしろいけれど、混乱させられます(苦笑)。おそらくそこが狙いだと思うのですが、このタイトルを思いついたのは?

マーティン:どっちかな? よく覚えてないなぁ(笑)。でも笑えるタイトルにしたかったのと、好きなアーティストたちのアルバムには、必ず『●●グレイテスト・ヒッツ』と書かれているのを見て、僕たちエイリアンが早とちりして“ならそれで行こう”と考えちゃったんだ。そんなタイトルのベスト・アルバムを出すには、それまでに何枚もアルバムを出してなきゃ、なんて知らなくてね(笑)。

メイジャー:他の人たちがやらないことをやってみるっていうのが面白いと思ったし、既成のルールを無視して”グレイテスト・ヒッツってタイトルにしちゃおう”ってノリだよね(笑)。

ーー他にタイトルのアイデアはなかったんですか?

マーティン:う~ん、これだけかな。

メイジャー:他にはなかったと思うな。

マーティン:バカバカしくて最高じゃないかと思ったし(笑)。

メイジャー:とにかく2人で大笑いしたよ。それがみんなにも伝わるといいなって思うしね。

ーーマーティンにとってはパーマネントなヴォーカリストをもつのは初めてじゃないかと思うのですが、毎回違ったヴォーカリストと仕事をするのと、メイジャーのひとりだけと仕事をするのとではどう違っていますか?

マーティン:うん、すごくアプローチが違っているよ。僕がデモを作ったり、メイジャーも時々デモを作ったりするんだけれど、“これはちょっとAREA21向けじゃないな”と思ったらマーティン・ギャリックスの曲として使うこともできる。

実際、今度リリースされるマーティン・ギャリックスの曲はメイジャーと一緒に書いたものなんだ。もっとアップリフティングなタイプで、AREA21向けというよりギャリックス向けの曲だと思ったからなんだ。“今度はフェス向けの曲を作ろうか”などと目標を決めなくても、自由にやってみて、あとから決めればいいから、すごく楽なんだ。それに同じ声を使って仕事をするってことは、曲によってどんなふうに彼の声を変えようかって、いろいろと試したりできるから僕にとってはすごく興味深いんだ。

曲の一部を取り出して、コードや音程などを変えたり、ディストーションを掛けたり、オートチューンを使ってみたり。大変なこともあるけれど、アルバム1枚を通して楽しんでもらうためには、色々と工夫が必要だからね。メイジャーの最高の声を使って、いろいろ試したり。ネクスト・レベルに高めてくれる。

ーーメイジャーにとっては、AREA21の楽曲制作は違っていますか?

メイジャー:マーティンも言ってたように、このプロジェクトでは、すごく密な関係でコラボしているから、まずそこが違うよね。歌詞とメロディ、音楽が同時に降りてくるって感じかな、そういう曲作りなんだ。こういう体験ができるのは嬉しいし、自分自身を外から眺めているような気分だったりもする。自分たちを介して曲が誕生しているようで、僕らはその手助け役のような感じがするよ。