お話やメールのやりとりで感じた真摯なお人柄からも、Yさんならまじめに翻訳に取り組んできちんと完成までこぎつけられるだろうと感じることができました。ただ、出版社の立場から考えると、懸念があるでしょう。医師なので医学的な専門知識の面での心配はないものの、翻訳経験はないからです。でも、Yさんは高い英語力とそれを示す資格や実務経験もお持ちです。そこで、出版社への安心材料を提示するために、試訳を多めに用意することをおすすめしました。普通なら1章分でもいいところですが、3章分ほどご用意いただくようにお願いしました。

Yさんは普段それほど小説を読まず、むしろお仕事のための実用書を読むことが多いとのお話でしたので、実際にこの原書が出版されたらどのような本になるかを考えて、近いトーンの小説や翻訳書を読んで参考にすることをおすすめしました。私が原書のイメージから近いと考えたのはみすず書房の作品でしたが、Yさんはその装幀を気にいっていらっしゃいました。装幀が気に入るということはその本の内容も気に入る可能性が高いので、それも参考になるかと思います。

試訳に関して、旧版の日本語訳とあえて変えたほうがいいのかというご質問がYさんからありました。意図があって翻訳を変えるならわかります。たとえば、もし旧版の解釈が自分の考えとは違う、旧版の翻訳では登場人物の心情が伝えきれないなどの理由であれば、翻訳が変わるのは自然でしょう。だけど「変えるためだけに変える」というのは違うのではないかとお答えしました。

フィードバックをもとに、Yさんには試訳に取り組んでもらうことにしました。Yさん、がんばってくださいね! また続きは追ってお伝えします。

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