雲揚号と砲撃戦を繰り広げた草芝鎮(チョジジン)
実は初めのころに、日本人が知らない日本植民地時代の話などを伝えようと努力していた時期がありました。雲揚号事件の現場があり、江華島のPRポイントはこれだ!と思っていました。しかし、それが目的で来られた方は別にして、テーマが重いために苦しくなってしまう。
もちろん、歴史の話をすることに変わりはありませんが、美しい自然の場所も人間が悲しい歴史の場所に変えてしまったわけですよね。自然の美しいところに行ったり、江華島の人々の話をしたり、最近は目の前にある風景を見ていただけるように努力しています。
今後は、体と心の癒しのエコツアーを企画したいです。おいしい田舎料理を食べて、音楽を聴きながら散策するような、ゆとりのある旅行です。
江華島だけでなく、韓国全土に候補地があるので、場所の選定をしているところです。美しい自然は人が守らなければならないし、そのためには人が自然に感動しなければ守ろうという気持ちにならない。
私自身の体験からそう思いました。韓国にはエネルギッシュなイメージがありますが、日本とはまた違った自然の姿や癒しがあるので、そういうものにも触れてもらえるようにしたいです。
お客様との関係の基本は、人間同士のおつきあい
旅のプランニングのおかげで詳しくわかった、と喜んでもらえた時が一番嬉しいですね。お客様とはビジネスというより人間同士のおつきあいのスタートだと思います。
お客様は私がなぜ江華島に住んでいるか気になるし、私はお客様がなぜ江華島に関心を持っているか気になるので、互いにやりとりを重ねながら、繋がりができていくのがおもしろいです。現地ではお客様の興味や状況にあわせて改めてご提案することも多く、やはり江華島をくまなく知っている地元の強みだと思います。
印象に残っているのは、重い病を長く患っていたご主人が回復されたので江華島旅行に来られることになり、奥様から誕生日会をしたいとご相談を受けたことです。韓国の家庭の雰囲気を味わっていただこうと、知人の協力を得て、家庭料理とケーキでおもてなしをし、私と夫と知人夫婦でギターを弾いて、歌を歌ってプレゼントをしました。
それを非常に喜んで下さって「もう一度生まれ変わったような気持ちがした」とお手紙を頂きました。報酬というのはどれだけ相手を喜ばせたかの結果だ、とある人に言われたことがあり、欲を出すのではなく、お客様がしたいことにできるだけ誠実に応えようと心がけています。
他人の家の冷蔵庫を開けるのは親しくなった証拠?!
アジュンマはマイペース
江華島は田舎なので、特に外国人というより、よそ者意識が強いです。来たばかりの頃は、受け入れてもらおうと地域の会合に顔を出すようにしました。会合に行って、びっくりしたのは、韓国のアジュンマ(おばさん)たちはみんなが同時にしゃべっていて、誰も人の話を聞いていないこと(笑)。
私は話もできず、ただ聞いているだけでしたが、日本語を習いたい人がいると紹介されて、人と会ううちに色んな集まりに誘われるようになり、知り合いが増えて受け入れてもらった感じがします。
仲良くなって互いの家を行き来するようになって驚いたのは、他人の家の冷蔵庫を勝手に開けること。結婚と同時に姑と暮らしていましたが、姑の友達のハルモ二(おばあさん)も家にやってくると冷蔵庫を開けるので、非常にびっくりしました。
人の家なのに自分の家のように振舞うのに驚きましたが、慣れていくうちに、今では私も人の家の冷蔵庫を開けるようになりました(笑)。他人も自分もあまり境界がない韓国の田舎の習慣ですが、それはそれでよい部分であると思っています。
ここで暮らしていく以上は、自分のスタイルを捨てようと決めていました。マリー・アントワネットがフランスに嫁ぐ時にオーストリアの物は下着すらも捨てて、フランス人になりなさいという話があったと聞いたことがありますが、日本スタイルはとりあえず、一旦捨てようと決めました。
でも韓国スタイルを受け入れようと思っても、何十年も習慣になった日本スタイルを簡単には捨てられないんですよね。ちょっとずつ努力しながら、韓国スタイルを受け入れていきました。
すべて受け入れてみる、というのは振り返ってみると私にとっては正解でした。今はどちらのスタイルがよいか選びながら自分流に新しく作っていく、そういう段階に来たのかなと思っています。
暮らしの中で日韓の歴史と出会い、考える
結婚前は韓国についてほとんど知識がなく、韓国に来て日韓の歴史に興味を持つようになりました。14~15年前は今より日本に対する感情が難しく、8月15日は朝から晩まで侵略の映像が流れていて、驚きました。そこで、本を読んだり、天安の独立記念館に行ったり、知りたいという気持ちがふつふつと湧き上がり、江華島はお年寄りが多いので、当時の話を聞きに行ったりしました。
観光案内所に勤めていた時も「日本人がなぜいるのか」とお年寄りが訪ねてきたこともあり、ある意味、傷に触れる部分でもあるので心配しましたが、私が江華島の住人だったことから、話を聞かせてくれた方々とは仲良くなれました。あるハルモ二は担任だった日本人の先生の名前もはっきりと覚えていて、もう一度会いたいという話をしてくれました。
よい思い出があったことも当事者の話から知りえるようになり、その時代に何があったのかを知りたくて、随分、歴史問題に傾倒した時期があり、私は在韓日本人として、日本人に知らせなくてはいけないという気持ちになりました。今は焦る気持ちはなく、自分が韓国で暮らしながら見聞きしたことは、自然に話せるときに話そうと思うようになりました。
ぶつかって近くなれるのが韓国、言いたいことは口に出して
韓国では意思表示をはっきりしないと伝わりません。日本では人とぶつかることなく暮らしてきたので、はじめは戸惑い、苦労しました。でも、韓国の人はぶつかっても、次の瞬間には「これ食べる?」とあとくされがない。今では逆にそれで心が開放されたような気がします。
今は言いたいことを言って暮らしていますよ。 日本の常識は韓国の非常識、その逆も然りで、韓国は外国だと感じるし、日本についても日本を離れて初めてわかることがたくさんありますね。自分のスタイルは一旦捨てると言いましたが、相手の視点に立ってみるとも言い換えられます。
自己主張は必要ですが、自分の考えに固執するとぶつかり過ぎてしまい兼ね合いが難しいのですが、その中で自分のスタイルを確立していくことではないでしょうか。 韓国と日本を近くて近い国にするには、在韓日本人の役割が大きいと思います。
韓国の人たちは私を通して日本を見ます。そういう意味では私という人間がいつも問われていると感じるし、あまり肩肘はると疲れますから、楽しくやっていきながら、自分が自然体でいる時に受け入れてもらえるような人間になることが大切だと思っています。
竹岡さんおススメのお店
蓮を使った料理で知られるこの店は道路沿いにぽつんとある食堂ですが、地元の人をはじめ旅行者も多く訪れます。この店の蓮は、蓮の寺として有名な近くの仙源寺(ソノォンサ)で栽培されたもの。
お昼のメニューとしてぴったりのへジャングッ(6,000ウォン)は豚肉を蓮の葉とともに煮立たせるので、肉の臭みがとれ、よりやわらなくなるのだとか。付け合せにはレンコンのチヂミ。摩り下ろしたレンコンで作られ、生地はもっちり、刻んだ蓮の葉の彩りもきれいです。
またこの店の肉は蓮の葉で包んだ熟成させたものを使用し、サムギョプサルやカムジャタンも人気です。そして、忘れてならないのが特産のカブを使ったキムチ。甘酸っぱさと歯ごたえが美味しいカブキムチは江華島でしか食べられない郷土の味です。
「チャムマッガーデン」
住所:仁川市 江華郡(カンファグン)仙源面(ソノンミョン) 神井里(シンジョンリ) 217-2
電話:032-932-0376
蓮の花の看板が目印
レンコンのチヂミ
名産カブキムチ
インタビューを終えて・・・
結婚当初は韓国語もほとんどできなくて、同居していた姑に「○○持ってきて」と言われても、言葉がわからず右往左往。学校には通わず、とにかく家族ドラマを何度も見て、言葉や家族関係や風習を覚えていったそうです。それが今では、電車などでマナーの気になる人がいたら注意をするほどに。「考えるより先に口が勝手に動いています。最近おばさんになったなあと思うんですよ」とはにかむ竹岡さん。しかし、その優しい表情の内には、第二の故郷江華島への強く熱い真っ直ぐな思いが溢れており、自身の足と目と心で確かめた韓国の地方の魅力を訪れた人々に伝えて下さることでしょう。
江華島
仁川市に属し、南北27キロ、東西16キロ、周囲99キロ、韓国で4番目に大きい島(済州島、巨済島、珍島の次)。人口は約6万人で主要産業は農業、漁業、観光。農業では高麗人参、カブ、薬用ヨモギ、漁業ではウナギ、エビなどが有名。世界遺産の支石墓をはじめ、伝燈寺(チョンドゥンサ)、摩尼山(マニサン)などが見所。特に摩尼山は檀君が天に向かって祭祀を行なったとされる霊山で気が集まることで知られたパワースポット。
提供・韓国旅行コネスト
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