ソウルから車で約1時間の距離にある江華島(カンファド)は仁川(インチョン)市に属する韓国で4番目に大きな島。世界遺産の支石墓(コインドル)などの遺跡とツツジで有名な高麗山(コリョサン)や干潟などの自然が豊富で、また雲揚号事件の舞台として日本とは歴史的に深い関係があります。その江華島に在住し、KBSの情報番組で「韓国人よりも江華島をよく知るアキコさん」として紹介されていたのが竹岡章子さん。江華島のことなら道の隅々までわかるという竹岡さんですが、暮らし始めた当初は驚きと戸惑いの連続だったそう。江華島の自然の美しさに魅せられ、その広報に力を注いでおられる竹岡さんに江華島に来た経緯、江華島での暮らし、現在のお仕事などについて伺いました。

第50回竹岡章子さん(江華島旅行コーディネーター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

職業 江華島旅行コーディネーター
年齢 48歳(1963年生)
出身地 東京都
在韓歴 14年
経歴 1997年結婚のため来韓。ソウルで日本語講師などを経て、2001年に江華島に移住。2005年から2009年まで江華郡所属で観光案内所勤務。2009年より、フリーランスの江華島旅行コーディネーターとして独立。江華島の魅力を日本に伝える活動を開始。
ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/ganghwa88
田舎暮らしを楽しむために、Iターンでやってきた江華島

第50回竹岡章子さん(江華島旅行コーディネーター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

のどかな風景が広がる
結婚して4年目、夫の故郷でもなく、親戚や知人がいたわけではありませんが、ソウルまで車で約1時間と近いながら自然が残されて環境がよく、いわゆる田舎暮らしができると、ソウルから江華島に移住しました。

私は記憶にないのですが、夫が言うには江華島の引越し先を見に行った帰り道、私が一言もしゃべらなかったそうです。私は東京出身で田舎に住んだ経験がなく、この土地でやっていけるだろうかと不安が大きかったことは確かですね。

第50回竹岡章子さん(江華島旅行コーディネーター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

春の高麗山
江華島に来てからは、実際にどういう自然の美しさがあるか、まずは歩いてみることにしました。春に花がさく、季節の移ろいとともに田んぼの色が変化していく…。「アルプスの少女ハイジ」に登場する都会の少女クララじゃないですが30を過ぎて自然に接して美しさに感動し、自分が人間らしさを持ったという感じを抱きました。

また、日本で人と自然をテーマにした曲でオカリナのバンド活動をしていましたが、江華島で改めてその音楽を聴いてみると自然の美しさや力を実感するようになり、江華島が好きになっていきました。
自然に触れることが、江華島を理解するための自分なりのアプローチでしたが、「江華島を好きだ」と思えるまでには3年くらいかかりました。
観光案内所を経て、江華島旅行コーディネーターに

第50回竹岡章子さん(江華島旅行コーディネーター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

観光案内所のある市外バスターミナル
江華島での暮らしに慣れて愛着が出てくると、地元に密着した仕事をしたいと考えるようになりました。

その時、江華島の歴史文化解説者の募集があり問合せたところ、観光課に人がいなくて困っていると言われ、市外バスターミナルにある観光案内所に勤めることになりました。

1年間は歴史や特産物、食べ物などについて、江華郡から教育を受けつつ、美味しい店があると聞けば訪ね歩き、島内をくまなく回りました。
江華島は小さいため観光案内所に国籍別のサービスはなく、私が案内すると韓国の人から外国人が江華島を案内するのか、と言われもしましたが「私の方がよく知っていますよ」と自信を持って言えるようになっていました。

第50回竹岡章子さん(江華島旅行コーディネーター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

しかし、観光案内所は韓国を含め、様々な国の人たちに対するサービスが基本です。地元に貢献する仕事の中でも、私はせっかく日本から来たので日本との架け橋になりたいという気持ちが起こってきました。

また案内所にいるよりも、積極的に出かけていきたいと考えるようになり、独立してコーディネーターの仕事を始めました。江華島を訪問したい日本の方にプランを企画して、完全オーダーメイド旅行をご提案しています。江華島に限定しているわけではありませんが、何よりも今は本当に江華島を好きになったので、江華島を専門にしています。
見どころと旨いものが豊富
江華島のおすすめは、ソウルから近いにも関わらず、自然が豊富だということ。北朝鮮を目の前にしている軍事地域のために開発できない事情がありますが、お陰で自然が残されていると言えるでしょう。私がお勧めするのは、江華島八景にもなっている燕尾亭(ヨンミジョン)。

静かで春夏秋冬、非常に景色が美しく、王が学問をするように命じた場所、両班(ヤンバン、朝鮮時代の貴族階級)が客人をもてなした場所であるとされています。対岸が北朝鮮で船が入れない土地柄のため、魚も豊富で渡り鳥もたくさんやってきます。

第50回竹岡章子さん(江華島旅行コーディネーター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

江華島名物のウナギ
食べ物ではアヒルとウナギ。アヒルは燻製されたものが多いですが、ここでは蒸したもの。脂が落ちて食べやすくなっています。ウナギは養殖が盛んですが、ある程度成長すると40~70日間、江華島を囲む干潟に返すので自然の養分を取り込み肉質がよくなり、天然物に負けない味があります。

ウナギのために江華島に来られる方もいるほどです。自然の中にいると心が安定し、爽快な気分になりますが、江華島は気軽に立ち寄れてリフレッシュするのに最適だと思います。
江華島が抱えている歴史と自然を伝える

第50回竹岡章子さん(江華島旅行コーディネーター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

世界遺産の支石墓
韓国旅行に来て、数ある訪問地の中から江華島を選択する人は限定されており、私にとって本当に貴重な方々です。訪れるきっかけの多くは世界遺産となった支石墓(コインドル)やすぐ対岸に見える北朝鮮展望です。歴史をよくご存知の方は雲揚号事件の起きた場所を見たいと言われます。

関心を持って訪れて下さるのは難しい部分もありますが、よいことだと思っています。いずれも簡単なテーマではないので大変ですが、本を読んだり、地元の方に話を聞いたり、現場でしかわからないようなことをお伝えしたいです。