第54回~土田真樹さん(映画ライター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ユン・ソクホ監督
次第に聴いてくれる人が増えて、「ラジオを聴いて家族で映画を見に行きました」と言ってもらえたりすることもあり、最近は評判がよいと聞いています。編集の仕事もそうですが映画の作り手側と見る側をつなぐのが僕の仕事です。

だから誰が読んでもわかりやすい文章を探し、没個性が個性だと思って誰にでも理解できる内容を心がけています。個性を出したいならエッセイや日記でしょう?いかにして映画と読者、観客をつなげていくかを考えています。

牛乳はそのまま飲むとお腹をこわしますが加熱すると美味しく飲めますよね。僕の役割はそういうものだと思っています。最近、昔に比べて取材がしにくくなったのが悩みです。以前は役者や監督にダイレクトに取材を申し込めばOKでした。

「キネマ旬報」の仕事で、表紙にするから単独取材させてくれと「ブラザーフット」という映画のプロデューサーに交渉したところ、チャン・ドンゴン、ウォンビン、監督の単独インタビューが実現し、その号はほぼ完売しました。以前は1つの窓口を通せばすべてOKで、特に海外メディアの取材は珍しがられて取材はすぐにOKが出ました。
今はそうはいかなくなって、知り合いの監督や役者に頼んでも「事務所を通して」「映画会社を通して」と言われ、あちこちに回されるうちに結局取材ができない場合がよくあります。僕たちは人対人の関係でやってきたのに、様々なしがらみができてしまって、フットワークが重くなってしまって残念です。そんな中でも前から親しくさせてもらっているユン・ソクホ監督(「冬のソナタ」他四季シリーズ)など、今でもダイレクトに取材を受けて下さる方もいます。

仲がいいほど迷惑をかけるのが韓国式友情の示し方

第54回~土田真樹さん(映画ライター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

日本人は親しき中にも礼儀ありで一線を越えてはいけないと考えています。韓国にはそれがありません。むしろ親しいからこれくらい迷惑かけても大丈夫だろうという感覚です。どこまで迷惑をかけられる仲か、というのが親しさの度合いで日本とは考え方が違います。

自分が甘えられる部分は甘えさせてもらうし、相手が甘えたいと思っていることに関しては受け入れてあげる。そのお互いのクロス部分の幅がいかにあるかというのが、韓国人との付き合いの妙味だと思います。

僕は大家族で育ったので人のものと自分のものの区別があまりなかったせいか、韓国に来てカルチャーショックはありませんでした。それに韓国は外国なので、日本だったらこうなのに、と日本の価値観で考えるとすべてマイナス思考になってしまいます。韓国に来て間もない頃、バイクでツーリング中に事故に遭い、大怪我をして1ヶ月半入院することになりました。

看護師が点滴を間違えて僕の腕が腫れたのに当の看護師が「ポパイの腕みたい!」と言ってみたり、同室のおじさんたちが夜中に酒盛りをしたり、韓国語もろくには話せない頃でしたが、日本に帰ろうという気にはならず、韓国っておもしろいな、こういう経験は日本ではできないなと思いました。僕の中にもアバウトな面があるので、水が合ったんだと思います。

映画に、ミュージカルに、韓国エンタメはおもしろい

継続は力なりで、一番大切なのは今の自分をこれからも続けることです。映画は好きですが、一歩離れてのめり込まなかったからこそ、今まで続けてこられたのではないかと思います。例えば、映画制作をしたい、監督になりたい、一発当てたいとか、欲を出さなかったのがよかったのではないでしょうか。

今後の計画としては、韓国ミュージカルの日本向け雑誌を創刊します。K-POP、ドラマが主流ですが、ミュージカルにも隠れた需要があるんですよ。大学路周辺の劇場でも日本語字幕つきの舞台も増えています。今、準備に追われていますが、映画と並行してやっていく予定です。

2011年夏の韓国映画

制作費100億ウォンを超えると言われ、スターが主演の大作が続いた2011年夏の韓国映画、中でも土田さんのおススメは「高地戦(コチジョン)」(チャン・フン監督、コス、シン・ハギュン主演)。「戦争の悲惨さが伝わってきて2時間13分は長いと感じませんでした。完成度が高いです。イ・ジェフンという若い俳優がストイックな演技をしていて注目です」。

「7鉱区(チルグァング)」(キム・ジフン監督、ハ・ジウォン、アン・ソンギ、オ・ジホ主演)(取材時、未鑑賞)「クイック(クイッ)」(チョ・ボムグ監督、イ・ミンギ、カン・イェウォン主演)「スピード感のある笑いもありの娯楽作品です。主演の2人をはじめ制作陣は「TSUNAMI」のチームです」

「最終兵器 弓(チェジョンビョンギファル)」(キム・ハンミン監督、パク・ヘイル、リュ・スンリョン主演)「よい意味で、スクリーンに引き込まれるアクション娯楽映画となっています。また、日本人俳優である大谷亮平さんの映画デビュー作です」。

第54回~土田真樹さん(映画ライター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

高地戦

第54回~土田真樹さん(映画ライター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

7鉱区

第54回~土田真樹さん(映画ライター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

クイック

第54回~土田真樹さん(映画ライター)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

最終兵器 弓

インタビューを終えて・・・

ストレス解消は海外旅行という土田さんですが、その旅程が誰にも真似できないほど非常にユニークです。「取材やラジオがあって長く休めないので、いつも弾丸ツアーです。1泊3日パリ、1泊3日ドイツ、0泊4日ブラジル。ブラジルはふと思い立って、アイルトン・セナの墓参りに行ったんですよ」。月に1回海外旅行に行って新しいものを見るということを自ら課しているからだそうで、何ともエネルギッシュな充電方法です。

「旅先でも時間があればふらっと映画館に立ち寄ります。ミャンマーでは電気事情が悪いので上映中で停電になったりして。その国の映画を見ることでトレンドや生活の一部を垣間見ることができます」。韓国映画も同様で、映画を見ると韓国を知ることができる部分は多々あります。これからも韓国をよく知る土田さんならではの視点で、韓国映画のおもしろさ、魅力を私たちに伝えて下さることでしょう。


提供・韓国旅行コネスト

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