対策3 収入範囲内の生活を心がける

老後の生活が破綻しやすい理由のひとつに、「収入よりも支出が多いこと」が挙げられる。定期的な収入をアテにしたクレジットカード決済が当たり前になっている人や毎月家計が赤字になっている人は今のうちに支出を見直そう。一部の人を除き、多くの場合、老後の収入は現役時代を下回る。そして、人間は習慣化している浪費を急にはやめられない。そして老後は病気や事故など不測の事態が生じやすい時期でもある。習慣化した浪費でいざトラブルが発生した時に備えがなくては何も対処ができない。

浪費グセやクレジットカード払いによる使いすぎが気になる人は、今のうちに毎月の支出を見直そう。特に、「なんとなく惰性で支払っているもの」「記憶のない支払」には厳しくメスを入れなければならない。

対策4 余剰資金で「安心資産」を作る

冒頭で「貯金3000万円あれば老後は安泰」という常識は意味がない、と述べた。だからといって、貯金がまったくムダなわけではない。いざという不測の事態に、さっと出せる安心資産があるのは心強い。仮に貯金を使わずに終わったとしても、日常生活を送る上での精神的な安心材料ともなる。

ただし、貯金は一気に作ろうとするとストレスがかかって失敗する。毎月少額を給与から天引きするなどして少しずつ積み立てていくとよい。余力があれば、余剰資金で投資信託などに投資し、お金に働いてもらうのもオススメだ。ただし、投資をする場合には、十分にメリット・デメリットを検討し、「老後も続けられる投資かどうか」を基準に検討していただきたい。

対策5 健康管理に注意する

現役時代の健康管理は老後に大きく響く。休肝日を設けず飲酒を続けていれば確実に肝臓は弱ってくるし、ヘビースモーカーであれば肺がんリスクが高まる。日常的に運動をしている人といない人とでは、老化のスピードや罹患率は違うという。定期的に健康診断を受けていれば、重大な病気の早期発見・早期治療につながるだろう。老後の介護や病気などの発生は予測できないが、現役時代にどれだけ健康に気づかうかで罹患率を抑えることはできる。
    
対策2で「受給年齢を繰り下げ、最低限60代は働いて収入を得るのがよい」とお伝えしたが、これも健康あってこそ実現する。老後のマネー対策というとお金の対策がまずイメージされるが、実は健康管理こそが最大の老後マネー対策なのである。

対策6 身近な人間関係を大事にする

高齢者が毎日安心して楽しく過ごすのに欠かせないのが人間関係だ。ここでいう人間関係とは、義理や見栄でつきあう関係ではない。日頃から本音や弱さをさらけだし、お互い困ったときに助け合えるような安心感のある人間関係である。

現代では、核家族が一般的なだけでなく、独身のまま一生を過ごす人も珍しくない。元気なうちはお金さえあれば一人で日常のときも不測の事態にも対処できるが、高齢になって体力が低下し、判断力が落ちると、お金があっても物事を一人で思うようにこなすことが難しくなる。

そんなとき、障壁になるのが「助けて」が言えない自分自身のプライドだ。困ったときに相談したり、助け合ったりできる相手がいないということは、若い頃は気力と体力で何とかなっても、老後を生きる上では大きなリスクとなる。人間は誰かとの関係性の中で存在している社会的な生き物だ。お金以上に、人と人とのつながりは人が生きる上でのセーフティネットとなっている。

だからといって信頼関係は急に作れない。時間をかけてゆっくりゆっくり築き上げていくものだ。仕事で忙しいとゆっくり人と話す時間を持つのが難しくなるが、なるべく意識して夫婦や家族、知人や友人との時間をもち、本音でつきあえる関係を今から構築していただきたい。

「年金対策」なのに、お金以外の話がほとんどで、地味でつまらなく感じたかもしれない。しかし現実に、人間の一生は地味の連続だ。ビジネスにも言えることだが、一発逆転劇を狙うような奇策はほとんど意味がない。効果があるとしても一瞬だ。そして奇策のリスクはたいてい高い。

一方、地味な努力の積み重ねは、すぐに結果は出ないが続ければ確実に効果が出る。そして、リスクもコストも少なくて済む。地味な努力の積み重ねこそ、もっとも人生を大きく変えてくれるものなのだ。それは「老後」という人生の一部についても言える。

老後の不安にかられて高額の金融商品や無理な不動産投資に手を出すのはやめよう。自分がどんな人生を歩み、どんな老後を迎えたいかをじっくり考え、今できることからコツコツ努力しよう。幸せになるための地道な努力が、より安心でより充実した老後を必ず実現してくれる。

文・鈴木 まゆ子(税理士、ライター、心理セラピスト)/ZUU online

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