「老後資金2,000万円」は本当に必要か?

ただ、必要となる老後資金は、個人差が極めて大きい。退職金の有無、その金額の多少、現役時代の収入額から決定される厚生年金の支給額、有価証券や収益不動産などの個人資産の有無で、必要となる金額が大きく違ってくるからだ。

また、資産運用を行うことに抵抗がないかどうかという個人のリスク耐性に加えて、都心や郊外など住んでいる地域の物価水準、老後の生活レベルによる支出額の違い、マイホームか、賃貸かといったさまざまな支出・消費傾向で必要な老後資金の金額は変化する。

しかしながら、今回取りざたされた2,000万円という具体的な数字は、老後資金対策の重要性を広く自覚させる上で十分な役割を果たしたといえるだろう。事実、これを機に証券口座の開設など、「自助」のための動きが広がっているそうだ。

確定拠出年金を併用した資産運用を

仮に今後30年間で老後資金2,000万円を貯蓄のみで用意するとなると、毎月5万5,500円を収入から銀行預金に回さなければならない計算になる。毎月の生活費からこれだけの金額を貯金に回すのは、家計への負担も大きく容易ではないはずだ。

ここで、金融資産による運用を検討してみよう。例えば、比較的低リスクといわれている国内債券を利用した投資信託で資産運用したケースで考える。大手証券会社が販売する確定拠出年金向けの債券ファンドは、10年間の利回りが年率平均で1.84%になる。仮にこの年率平均が30年続いたとして、老後資金2,000万円を積み立てるなら、月々に捻出する金額は4万1,700円となる。

これだけでも、かなり現実的な数字に近づいてきたが、政府が推進する確定拠出年金(iDeCo)を利用すれば、さらに捻出すべき自己資金は減らすことができるだろう。確定拠出年金は、拠出した金額が、すべて小規模企業共済等掛金控除により所得控除される。

拠出できる金額の上限は就労形態や企業年金の有無などで変化するが、仮に毎月2万3,000円を拠出した場合、年額27万6,000円が所得控除される。この全額が還付されるわけではないが、最低でも所得税の税率約5%と住民税の税率約10%を乗じたものが還付金額となる。この場合の還付合計額は約4万1,400円だ。

このように、政府の用意する制度を利用しながら、少額でも資産運用を行うことで老後資金2,000万円は実現可能な金額になってくる。資産形成では、時間を味方につけることが肝要だ。時間をかけることで、ローリスク・ローリターンの投資でも、十分な効果を得られるようになるからだ。老後資金2,000万円の問題は、決して人ごとではない。できるだけ早い時期に、問題解決に向けて動くことが大切になる。
 
>> オリジナルサイトで読む

文・ZUU online編集部/ZUU online

【こちらの記事もおすすめ】
豊かな老後のためにすべき3つのこと
アラフォー女性のための幸せ貯金計画
お金が貯まる5つのコツ
貯まらない女子「3つの言い訳」対処法
「お金がない時」5つのNG行動