老後の生活に必要になる資金は、夫婦で6,000万とも1億円とも言われますが、実際のところどうなのでしょうか。また、老後資金はどうやって準備すればいいのでしょうか。今回は60歳以降、実際に夫婦で必要な老後資金を計算し、その資金を実際に準備するための対策をご紹介します。

老後資金に1億円は本当か?

(写真=PIXTA)

老後の支出を計算してみる

総務省統計局が2018年に発表した「家計調査年報(家計収支編)」によると、世帯主が60~64歳の無職世帯の1ヵ月の支出は32万2,585円、65歳以上では26万1,547円でした。また、2017年に発表された簡易生命表によると、60歳時点の平均余命は、男性で23.72年、女性で28.97年となっています。

今回は、夫婦ともに60歳以降、妻の平均余命の29年生きると考えてみましょう。
この場合、29年間で必要な資金は、

32万2,585円 × 12ヵ月 × 5年 + 26万1,547円 × 12ヵ月 × 24年 = 9,468万636円

と計算できます。500万円ぐらいは余裕資金を持ちたいと思うでしょうから、1億円というのはあながち大げさな金額ではなさそうです。

年金と退職金は頼りになる

ただし、1億円をすべて用意する必要はありません。普通の会社員の方であれば、老後の資金の柱として年金と退職金があります。

まず年金ですが、前述の家計調査年報によると、65歳以上の二人世帯以上の公的年金からの給付は、18万257円です。これを夫婦が65歳から89歳になるまで受け取れるとすると、年金給付の総額は、

18万257円 × 12ヵ月 × 24年 = 5,191万4,016円

となります。

次に退職金ですが、厚生労働省が2018年に発表した「就労条件総合調査」によると、定年退職者の退職金は、大学・大学院卒で1,983万円、高校卒で1,618万円でした。

つまり、60歳以降の老後資金は確かに1億円ぐらい必要ですが、年金で約5,200万円、退職金で1,600万円~2,000万円ぐらい収入があるので、残り3,000万円ほど自分たちで準備すればいいことになります。

老後も働くという選択肢

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一番確実なのは元気なうちは働くこと

3,000万円を準備するには貯金も大切ですが、元気なうちは働くことが一番確実です。1年間に200万円の収入としても、5年間で1,000万円、10年間で2,000万円、15年間働けば3,000万円のプラスになります。

貯金だけで3,000万円準備するのは大変ですが、今から老後も働くという準備をしておけば、老後のプランはかなり楽になるのがおわかりいただけると思います。

金銭面以外のメリットも大きい

60歳まで一生懸命働くんだから、老後はゆっくり暮らしたいと思う人も多いとは思いますが、老後も働くメリットは金銭的なものだけではありません。

老後行う仕事は、もしかしたら今までの経験が活かせないものかもしれません。しかし、社会とつながり、貢献しているという実感を得られるのは、貯金残高を気にして毎日家で過ごすよりよほど幸せなことではないでしょうか。

年金の繰り下げ受給を知っておこう

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年金は65歳からもらえると思っている人も多いと思いますが、実は申請すれば繰上げて60歳からもらえますし、70歳まで繰下げることもできます。

繰上げ受給の場合は年金額が減り、繰下げた場合は増えます。例えば70歳に繰下受給を開始すると、65歳時点からもらう場合と比べ、42%増額されます。つまり、上で紹介した夫婦の例では、18万257円の42%増で25万5,964円となります。この場合、82歳より長生きすれば年金の受給額の合計は繰下げ受給の方が多くなります。

健康なうちは働き、その間年金の受給を繰下げることができれば、その後の生活はより楽になります。もちろん思ったより長生きできなかった場合は損ですが、そもそも老後資金は思ったより長生きする場合に備えたほうが余裕がでるものです。繰下げ受給を考える価値は十分にあるでしょう。

老後も働いてみようかなという気持ちで準備してみよう

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老後資金は確かに1億円ほどかかりますが、退職金と年金を考えるとそれほど難しい額ではありません。また、健康なうちは働くようにすると、金銭面でも楽になります。加えて、社会的なつながりや地域への貢献を実感として得られるメリットもあります。老後資金が無くなったらどうしようと不安に思うより、老後働くという選択肢を持ち、そのために健康に気をつけたり知識を得たりとプランを考えてみるのも楽しいのではないでしょうか。

文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所

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