結婚したとき、仕事を辞めたときなど、「自分の夫(もしくは妻)の扶養に入っておこうかな」と考えるかもしれません。年金にも扶養制度があり、夫が厚生年金を納めていてかつ条件を満たしていれば扶養に入れます。ここでは、年金の扶養に入っている人の区分である「国民年金第3号被保険者」の基礎知識を解説します。扶養される人が将来もらえる年金や必要な手続きについて、しっかり確認していきましょう。

国民年金第3号被保険者とは

(写真=PIXTA)

国民年金には第1号、第2号、第3号という種類があり、それぞれ対象になる人が違います。

第1号被保険者……自営業、農業、漁業、フリーター、無職など第2号と第3号以外の人。
第2号被保険者……会社員、公務員など厚生年金に加入している人。
第3号被保険者……第2号被保険者に扶養されている配偶者。

配偶者が第1号被保険者にあてはまる場合は、第3号被保険者になることはできません。元々はおもに会社員の妻(専業主婦)を想定して作られたものですが、「配偶者」とあるとおり夫でも妻でもどちらでも構いませんし、入籍していない事実婚(内縁関係)でも対象になります。

第3号被保険者になると、自分で年金保険料を納めていなくても、納めたものとみなされます。第2号被保険者である配偶者の保険料負担が増えることもありません。負担なしで、将来老後を迎えたときは「老齢基礎年金」、万が一の病気やケガで障害状態になったときは「障害基礎年金」を受け取ることができます。

国民年金第3号被保険者になる条件

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第3号被保険者になるには「配偶者であること」以外に、「収入面での条件をクリアすること」も必要です。配偶者の収入で主に家計を支えていて、本人の年収は130万円(60歳以上もしくは障害者に該当する場合は180万円)未満であることが条件です。

また、たとえ年収130万円未満でも、自身の職場で厚生年金に加入しているなら、第3号被保険者になることはできません。

第3号被保険者がもらえる年金額は?

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第3号被保険者は年金保険料を支払わなくて済むと説明しましたが、では、もらえる金額はどうなるのでしょうか?

第3号被保険者の年金額は、国民年金に加入している期間がどれくらいあるかによります。20歳から60歳までの40年間、全期間において全額の保険料を支払ったとみなされれば、老後65歳から受け取れる「老齢基礎年金」は年間78万100円(2019年4月以降)です。保険料が免除や未納になっている期間がある場合、それに応じてここから減額されます。

保険料を負担しない第3号被保険者でも、年金額は第1号被保険者と同じルールで計算されるので、なんだかお得感がありますね。扶養に入るか入らないかギリギリくらいの収入なら、扶養に入って第3号になっておいた方が手取り収入は増えるでしょう。

ただ、会社員など厚生年金に加入して働いていれば、現役の間は共働きだと貯金も増えやすくなりますし、老後は「老齢基礎年金」だけでなく「老齢厚生年金」も受け取ることができます。配偶者の収入が相当高ければ別ですが、第3者被保険者でいる期間が長いと、どうしても老後の保障が手薄になりがちなので、そこは夫婦でよく話し合って決めるといいでしょう。

国民年金第3号被保険者の加入手続き

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第3号被保険者になる手続きは、配偶者の勤務先でしてもらえます。配偶者を通して、総務や人事など担当部署に扶養に入りたい旨を伝えれば、必要な書類や書き方を教えてもらえるはずです。

その指示に従って「被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届」や収入を証明する書類などを提出すれば、あとはその部署の方で日本年金機構などとやり取りして手続きを完了させてくれるでしょう。

国民年金第3号被保険者でなくなるときの手続き

扶養から外れるときも、手続きが必要です。自身の収入が増えて扶養の条件を満たさなくなった場合や配偶者と離婚した場合は、加入したときと同じように配偶者の勤務先に申告して「被扶養配偶者非該当届」を提出します。さらに、第3号被保険者から第1号被保険者になる旨を市町村の年金窓口に届け出ます。

そのほか、配偶者が脱サラして自営業になったとき、配偶者が65歳を超えたときなども第3号被保険者ではなくなるため、市町村役場での手続きが必要です。この手続きには、第3号被保険者でなくなってから14日以内という期限がありますので、忘れないように気を付けましょう。

もし自身の職場で新しく厚生年金に加入することになった(第3号被保険者から第2号被保険者になった)ときは、その職場で手続きしてもらえますので自分で役所に行く必要はありません。

手続きが漏れていた、遅れてしまったとき

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第3号被保険者でなくなったのに手続きをしないままでいると、保険料を支払っていない期間は当然「未納期間」とみなされます。未納期間があると、その分受給できる年金額は少なくなってしまいますし、最悪の場合まったく受け取れない「無年金」状態にもなりかねません。

将来の年金減少を防ぐため、過去2年分までならさかのぼって保険料を納めることもできますが、まとまったお金や「特定期間該当届」の提出などが必要になってしまうので、やはり早めに手続きしておくのがおすすめです。

「年金のことはよくわからない……」と感じる方も多いかも知れません。でもそのままにしておくと、自分や家族が損したり困ったりすることになるかもしれません。ある程度理解して、第3者被保険者になるかならないか考えて判断し、手続きはしっかり済ませるようにしましょう。不安なら年金事務所や市町村役場の年金窓口に問い合わせれば教えてもらえますよ。

文・馬場愛梨(「貧困女子」脱出アドバイザー/ばばえりFP事務所 代表)

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