カセはずしステップ3:最後に残っていたのは「信用するな」

(写真=fizkes/Shutterstock.com)

相手ともめたときに心の中でしていた「事前防御」

そのまま順調に交際が続くかと思われた3年目、関係がガタつき始めます。スケジュールのすり合わせなどに際し、筆者が無理をしていると感じるシーンが増えたのです。

こちらの不満を伝えたことも一、二度ありますが、筆者はどうしても相手の反応を事前にシミュレーションする癖が抜けませんでした。例えば、次のような具合です。

①何を言っても曲解されるパターン
②こちらの落ち度を突いてずらした論点で反撃されるパターン
③ここにいない第三者のせいにして責任逃れされるパターン
④自分のほうが大変なので優先してもらって当然とするパターン
⑤まったくそんなつもりがないので思い過ごしだとされるパターン
言いたいことは分かるがどうすることもできないと放棄されるパターン

ひどいですよね。ですが無意識のうちに、一番ひどい想定をして備えてしまうのです。実際にはこんな反応は返ってこないのですが……。

3年通った末に別れを決意

彼と会うときはいつも筆者のほうが訪ねるというパターンも、徐々に負担となっていきました。彼がお店を経営していて休みが取れなかったり、外国人なので地理や道路に詳しくなかったりすることも要因でしたが、彼がしばしば口にする「いつか」「訪ねるつもり」がじわじわと心理的なダメージとなっていきます。

筆者の家と彼の家の距離はおよそ200km。あるとき、また彼の都合を引き受けることになってしまい、もう嫌になってしまいました。ふと思いついてこの3年間にかかったガソリン代と高速料金を計算してみたところ、絶句するような額に。ダメだ、これは。

おりしも別件のトラブルが発生し、彼のことははぐらかしながらタイミングを計っていましたが、とうとう何かを察した彼が疑問を投げかけてきたので、意を決して別れ話をしました。

「言わなきゃ分からない人は、分かるつもりがない」

結果何が起こったかというと、彼が筆者の家に来るという事態に急展開しました。さらにその後、初めてその道のりを運転した彼が「ゴメンネ、こんなに遠いのだとは気付かなかった。これから費用も負担する」と謝罪するところまで。

筆者にとってかなり予想外の展開で驚いたのですが、そこに筆者の最後まで解けなかった思い込みがありました。筆者は「気付かなかったのだと気付かなかった」のです。「当然気付いているはずなのに知らん顔を決め込んでいる」と思っていたのです。

筆者も「フェアじゃないからこっちにも来てほしい」とは一度も言いませんでした。一度二度、何かの折にこちらの町に誘ったことがあるだけでした。

筆者の癖ですが、相手にあまり要求しないのです。数回軽く求めて何もなければ、「するつもりがない」とみなします。筆者はずっと無意識に「言わなきゃ分からない人は言っても聞かない。そもそも分かるつもりがない」と思い込んでいたのです。

筆者のラスボスは、「信用するな」「期待するな」でした。信用して期待してそれが裏切られれば、その落差の分、心は傷つきます。「信用しないこと」は、最後まで一番深いところに沈んでいた自己防御だったのだなと思います。

相手を信じることは、自分を信じること

(写真=lola1960/Shutterstock.com)

筆者の男性不信も完全に解けたわけではないと思いますし、彼のことをパーフェクトな人格者だと見直したわけでもありません。むしろ、だめんず要素も備えていると思います。ただ、元夫像を彼に投影し続けていたら、見誤るものがきっとあっただろうと思います。

自分の目は過去の経験に影響され、バイアスに引きずられる。筆者は元夫と彼の違いを発見することで、少しずつ修正していきましたが、それでも彼を信じるということはとても難しかった。おそらく相手を信じるということは、自分の目、自分の判断をどこまで信じられるかということなのでしょう。

自分の判断基準は簡単にゆがみますから、ある特定の経験に引きずられないよう、「カセ」を相対化できる価値観のバリエーションに触れている必要があるのだと思います。新しく出会う相手でも友人でも同僚でもいいのでしょう。もしかすると、結婚前にもっとたくさんの男性と付き合っておくべきだったのかも……?と考えることもあります。

文・菊池とおこ/DAILY ANDS

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