老後といっても、アラフォー世代の皆さんには20年ほど先の話。「どんな生活をしているかな」と考える機会は少ないかもしれません。会社を退職したあとの生活は、公的年金が生活費の軸になります。すでに老後を迎えた世代の人達はどのように暮しているのでしょう。ちょっと覗いてみましょう。

夫婦の老後の生活費の内訳

(写真=PIXTA)

老後を夫婦で暮す場合の生活費は、総務省の平成29年家計調査報告によると、夫65歳以上で妻60歳以上の夫婦のみで、仕事をしていない世帯の毎月の生活費の場合

消費支出:23万5,477円  
・食費:6万4,444円
・住居:1万3,656円
・光熱・水道:1万9,267円
・家具・家事用品:9,405円
・被服及び履物:6,497円
・保健医療:1万5,512円
・交通・通信:2万7,576円
・教育:15円
・教養娯楽:2万5,077円
・交際費:2万7,388円
・その他:2万6,640円

と、なっています。その他に税金・社会保険料は2万8,240円かかり、合計で26万3,717円です。

世帯の住居費は1万3,656円です。家計調査では、個人の消費がどのように動いているかをとらえるための指標として消費支出の増減を公表していますが、調査の対象となる世帯が約8,000世帯と限られています。月ごとの収支が大きく変動すると個人消費の動きをとらえにくくなることから、家計の最終的な消費支出ではなく、「住居」、「自動車等購入」、「贈与金」、「仕送り金」の4項目を除いた収支を公表しています。

したがって住宅ローンや家賃を支払っている世帯と支払っていない世帯とでは毎月の住居費を含む家計収支が大きく変わりますので、現在住宅ローンを払っている世帯なら、65歳までに完済しておけば老後の毎月の負担額はかなり軽減されます。

また、娯楽にもっと費用をかけたい人もいるでしょう。例えば、旅行に1回30万円、20回行くとすると、30万円×20回=600万円が必要です。

老後をどのように過ごしたいかで必要な資金は変わってきますので、今のうちから考えておくと、時間をかけて準備することができます。

老後の生活費は現役時代と何が違う?

(写真=PIXTA)

現役世代の家計収支はどのようになっているのでしょうか。全国の2人以上の世帯のうち世帯主が45~49歳の場合を例にとって紹介します。

家計の内訳は、

消費支出:33万7,032円
・食費:7万9,484円
・住居:1万4,961円
・光熱・水道:2万2,407円
・家具・家事用品:1万108円
・被服及び履物:1万5,083円
・保健医療:1万377円
・交通・通信:5万3,004円
・教育:3万4,523円
・教養娯楽:3万5,412円
・その他支出:6万1,675円

となっています。老後の生活費と異なっている交通・通信費には自動車関連費2万6,312円が含まれています。老後は、教育費が無くなるのでかかっていませんね。定期的な通院の可能性がありますので老後の方は医療費がかかっています。子どもがいる場合は、独立すれば食費や光熱・水道費も含めて全体に支出金額が小さくても済むようになります。

単身者になっても生活費に大差はなし

(写真=PIXTA)

一方、同調査で、60歳以上の1人で暮している無職世帯では家計の内訳はどのようになっているでしょうか。

消費支出:14万2,198円
・食費:3万5,418円
・住居:1万4,538円
・光熱・水道:1万2,989円
・家具・家事用品:6,098円
・被服及び履物:3,808円
・保健医療:7,936円
・交通・通信:1万3,148円
・教育:0円
・教養娯楽:1万6,852円
・交際費:1万7,528円
・その他の消費支出:1万3,851円

その他に、税金や社会保険料が1万2,544円かかります。

現在の生活費の内訳と比べてみると違いがイメージできるのではないでしょうか。食費や水道・光熱費はどうでしょう。

1人で暮す場合でも、収入と支出には差額があり不足分の4万715円は預貯金から取り崩すことになります。65歳から90歳までの不足分の総額は1,221万4,500円です。

仮に夫婦のどちらかが先立ったり、熟年離婚をして1人で暮すことになったとしても、収入に対する不足分は必要になります。夫婦で暮す時と同様に老後を迎える前に準備しておくことができると安心です。

老後に夫婦揃ってゆとりある生活をするには

(写真=PIXTA)

老後に夫婦揃ってゆとりある生活をするためには、毎月の生活費はいくらくらいあればいいのでしょうか。

ゆとりある老後生活を送るために、日常生活費以外に必要な資金は平均で12.8万円となり、上乗せ額を合計した老後生活費は34.9万円という調査結果があります。もちろん世帯によって内訳が違いますからこの金額がなければいけないというものではありません。

平成29年度の人口に占める労働力人口の割合は、65~69歳で45.3%、70~74歳で27.6%となっていて上昇傾向です。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」で65歳まで働くことができるように「定年制の廃止」、「定年の引き上げ」、「継続雇用制度の導入」の措置が義務付けられています。希望者全員が65歳以上まで働くことができる企業の割合が75.6%というデータもあり、働くことによって収入を得ることができるように制度が整えられつつあります。

老後も生き生きと暮らせるように今から準備を始めておきましょう。

文・藤原洋子(ファイナンシャルプランナー)

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