日本人の結婚年齢は年々遅くなっており、今では30代での結婚も普通になってきました。実際に、東京都の初婚年齢の平均は男女とも30歳を超えています。晩婚化が進むに従い、30代後半や40歳前後で子供を授かる夫婦も増えています。出産自体はおめでたいことですが、心配なのは教育費と老後資金の準備です。子供がかわいいからと教育費にお金をかけすぎると、老後の生活が破綻するかもしれません。

30歳後半で結婚、40歳のときに子供を授かった夫婦

(写真=PIXTA)

 

子供の進路のことで相談に来られた会社員のDさん(43歳)は、37歳のときに2歳年上の女性と結婚し、1年後に子供を授かりました。遅くにできた子供のため、夫婦とも溺愛し、教育もできるだけいい環境で受けさせたいと言います。

初めて相談に来られたとき、お子さんは5歳でしたが、小学校から大学までエスカレーター式の私立学校に通わせたいとのこと。しかし、家計の貯金は約400万円にもかかわらず、住宅ローンの返済も残っているため、あまり教育費にお金をかけると老後資金の心配があることをお伝えしました。

小学校に上がるまでは月に数万円貯金できていたが

(写真=PIXTA)

 

しばらくDさん夫妻から連絡はありませんでしたが、子供が小学2年生に上がる前に再び相談に来られました。聞けば、やはり子供を大学までエスカレーター式の私立校に入学させたとのこと。そこまでは計画通りでしたが、学費が年間100万円程度と思っていたのに、学校以外にかかる活動費が50万円以上かかり、今はまったく貯金ができていないと言います。

公立と私立では授業料はもちろん、それ以外にかかる費用にも差があります。学習費の総額の比較を以下の表で見てみましょう。

表.学校種別の学習費総額(1年間1人あたり)

小学校 中学校 高校 大学
公立 32万1,281円 48万8,397円 45万7,380円 国立 152万3,200円
公立 143万4,700円
私立 159万8,691円 140万6,433円 96万9,911円 私立 203万3,600円

 

小学校から大学まですべて公立の場合、学習費総額は約1,050万円ですが、私立に通わせるとその総額は約2,485万円と、約2.4倍になります。

50代になっても貯金を取り崩す生活

(写真=PIXTA)

 

Dさんの妻がパートに出るなど収入を増やす努力はしましたが、相変わらず習い事や親同士の付き合いにお金がかかります。Dさん夫妻は現在50代ですが、貯金を増やすどころか、今では貯金を取り崩さないと生活が成り立ちません。

それでもこれまでは老後も働き続ければなんとかなると考えていたようですが、この段階に来てようやく定年後の再雇用などで給与が大幅に引き下げられる重大さに気付きます。このままでは60歳を過ぎても老後資金を作ることができないかもしれません。

子供の教育費は各家庭の考えが最も反映される項目ですので、「私立じゃなくても良い教育は受けさせられます」や「教育だけでいい人生が送れるとは限りません」など、安易なことを言うつもりはありません。

しかし、夫婦の日々の暮らしや、老後の生活を危険にさらしてまで教育費にお金をかけすぎることが、本当に家族全体にとって幸せなことなのかどうか、しっかりと考える必要があることはわかっていただけるのではないでしょうか。

教育費と老後資金を両立させる難しさ

 

(写真=PIXTA)

 

Dさん夫妻のように結婚・出産が遅かった夫婦は、これから現役で働ける20数年の間に、住宅の購入、子供の教育費、そして老後資金といったライフイベントのための出費が集中します。独身の間はやはり貯金へのモチベーションが上がらないのか、晩婚の夫婦と言ってもそれほど貯金が多くないケースは多いです。

まずは自分たちの家計や資産を把握し、将来の計画は子供の教育費に偏ることなく、家族全体の人生を考えて資金計画を立てるようにしましょう。

 

 

文・松岡紀史
肩書・ライツワードFP事務所代表/ファイナンシャルプランナー
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。

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