④米国は中古不動産市場が整備されているため出口戦略も

富裕層は、投資の出口(売却)も見逃さない。不動産は株式等に比べて流動性が低く、原則相対取引のためこの不動産市場が整備されているということが計画通りに投資の出口を確保する上で大きなポイントになる。

そこで富裕層は、米国の中古不動産市場が整備されているという点に注目する。

先に説明したとおり、米国では中古の物件でも建物の価値が評価される。一方、日本では減価償却後の建物価値が評価されず出口で損をしてしまう場合がある。米国では古くなっても建物の価値がある理由のひとつに、建物の築年数より、学区やセキュリティ等を重視する傾向があり、その需要と供給のバランスから、人気エリアでは購入時期を間違わなければ価格が下がり辛く、上がる場合もある。

そして、売却に関しては、物件を購入し4年で売却すると短期譲渡所得になるので、税率が有利な長期譲渡所得扱いになる5年以上保有してから売却することが多い。

また、米国での売買でエスクローという第三者が取引の安全性を担保するシステムを採用している州ならライセンスを持つエスクロー会社が物件のコンディション評価や売買の資金管理等を行うので、不動産取引の公平性を確保できる。日本人だからといって不利になることはないのだ。

もう一点、出口戦略での重要なポイントの一つに通貨の信用と換金性がある。日本円はどこの国でもすぐに換金してくれるので、日本人はその恩恵を忘れてしまいがちだが、どの通貨で利益を確保するかで、この状況が変わってくる。

USドルやユーロならそのまま日本円にストレートに換金できるが、他の国の通貨ではストレートに日本円に換金できない場合のほうが多いのだ。海外旅行から帰国して現地通貨を日本円に換金しようとして断られたことはないだろうか。金額が大きくなればこのことの重要性を理解できるだろう。

いくら美しい国の物件でも最終的に日本円に換金出来なければ投資にならない。また、現地通貨の価値が短期間で大幅に減少してしまっては意味が無い。USドルならせっかく得た利益を日本円に換金できないといった心配はないのでレートを見ながらいつでも換金することができる。

以上、税対策だけでなく出口戦略まで考えた4つの理由から富裕層は米国不動産に注目しているのだ。

*本コラムは税改正やその他の理由等により、内容について保証するものではございませんのであらかじめご了承ください。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認して、ご自身の判断でお願いいたします。

文・ 黒木陽斗/ZUU online

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