相続税法が改正され個人の税負担が増える中、都内の高層タワーマンションを購入して節税対策を行う「タワマン節税」が注目されている。しかし、不動産投資による節税対策はそれだけではない。不動産税制に詳しい富裕層は米国の中古不動産を購入して節税対策を行っているのだ。通貨も制度も違う米国不動産をわざわざ購入するには、富裕層ならではいくつかの理由が存在する。ここではその代表的な理由を4つ紹介しよう。
①「建物:土地」価値の比率が異なる
日本で減価償却が終了した建物は、たとえ十分使用できる状態であっても、ほぼ建物の価値がないと見なされる場合が多い。例えば、木造の建物の場合、法定耐用年数の築22年を超えて減価償却がなくなると、その価値は実質上、土地値の評価になってしまう。
しかし、米国だと事情は異なる。米国の不動産市場では1950年代の家でも流通している状況で、日本のように22年を超えた木造建物の価値がなくなるようなことはない。したがって、建物価格を評価する米国の場合、日本に比べて建物価格の比率が高く70~80%以上となるケースがあると言われている。税対策の一つとして、減価償却を利用したい日本の富裕層はこの日米のギャップに注目するわけだ。
②減価償却の計算方法は日本の税制に従う
米国不動産だからといっても日本在住の場合、日本の税制に従う必要がある。減価償却の計算方法も同じで、建物価格だけを日本の税制に則って減価償却していくことになる。建物価格が大きく、減価償却期間が短いほうが理論上、節税効果が高いのだ。
しかし、日本の不動産では減価償却期間が短くなれば、建物が古いことを意味するので建物価格が激減してしまう。そこで、法定耐用年数を超えた木造物件でも建物の評価割合が高い米国不動産を購入し、節税効果を狙うというわけだ。
このように、建物評価割合が高く、減価償却できる期間が短いという米国不動産に富裕層の注目が集まるのだ。
③日米木造中古住宅の評価の仕方
日本では法定耐用年数22年を超えた木造建物は価値がほとんど無いとみなされるといっても、現実には築が古い物件が売買されている。
この場合、法定耐用年数を超えた物件の建物価格はほとんど評価されず、土地評価額で売買されているのだ。一方、米国は築が古い木造住宅でも日本に比べて建物の評価が高いため、日本より大きな額の減価償却ができる。
日本在住で米国不動産を購入したケースも法定耐用年数22年を超えた木造建物は日本の不動産と同じように4年で減価償却できる。
例えば、米国で築22年以上の木造住宅を1億円(建物評価額)で購入すれば、4年間で毎年2000万円(1億円×建物評価額の80%÷4年)の減価償却ができる。これが日本であれば築22年以上の木造住宅で1億円の建物評価額は存在しない(ほとんど)ため国内の不動産ではこの方法は通用しないのだ。
同じ減価償却期間でも建物の評価の考え方の違いで大きく変わってくる。ここに日米評価の歪みが生まれ、富裕層が米国不動産に注目している理由が見えてくるのだ。