(2)色の捉え方が同じでも、言葉の上での使い方が英語話者と日本語話者とでは異なる場合
次の例を見てみましょう。これは色に関するある本から引用したものです。「子供に”変な”色をしたモノを見せると、それが何かを認識するまでにより長い時間がかかる」といった内容の文です。
Research shows that if you show a kid a picture of a blue apple, as oposed to a red one, and ask them what the object in the picture is, it will take them longer to recognize it as an apple. They are likely to think that a blue apple is funny.
直訳:青いリンゴの絵を子供に見せて、それは何かとたずねると、リンゴだと認識するまでにかかる時間が赤いリンゴのときよりも長いことが研究により明らかになっています。子供たちは、青いリンゴは「奇妙でおかしい」と思うものです。
さて、ここで注目していただきたいのは、a blue appleです。上の訳では「青いリンゴ」と訳されています。一見、これで問題なさそうに思えます。
しかしもう一度考えてみてください。訳文の最後の文を読んでみてください。「子供たちは、青いリンゴは『奇妙でおかしい』と思うものです」とあります。はたして「青いリンゴ」は「奇妙でおかしい」ものでしょうか。
これは英語の「blue」と日本語の「青い」が一致しないことを考慮しなかったための誤訳です。
日本人は「青いリンゴ」という言葉から「緑色ではない、青色のリンゴ」を思い浮かべることはありません。
「青いリンゴ」とか「青リンゴ」で画像検索してみてください。緑色のリンゴが出てきます。日本語では緑色のリンゴのことを「青いリンゴ」とか「青リンゴ」というのですから当然です。
ところが日本語でいう「青いリンゴ」は、英語では「green apple」に相当し、英語の「blue apple」はまさに「緑色ではない、青色のリンゴ」のことを指すのです。自然界にはそんな色のリンゴは存在しませんが、アメリカではロゴとして青色のリンゴを使うこともあるようです。「緑色ではなく青色をしたリンゴ」と修正してみましょう。
修正訳:緑色ではなく青色をしたリンゴの子供に見せて、それは何かとたずねると、リンゴだと認識するまでにかかる時間が赤いリンゴのときよりも長いことが研究により明らかになっています。子供たちは、緑色ではない、青色をしたリンゴは「奇妙でおかしい」と思うものです。
しかし、これではあまりにも長くなります。
この研究では「子供たちに変な色をしたモノを見せると、それが何かを認識するまでにより長い時間がかかる」ということがいいたいので、「緑色ではなく青色をした」と長ったらしく言って訳文を読みにくくしなくても、ほかの色でもいいのです。
ただ、原文に blue appleが使われているので、あまりかけ離れた色を使うのはまずいでしょう。何かいい手はないでしょうか。
英和辞典を引いてみましょう。するとbuleの訳として「青色」以外にも「藍色」とか「紺色」という訳語がありました。そうです、blueは日本語でいう「藍色」や「紺色」も含まれるのです。
ここでは「紺色」を使って訳を修正しましょう。
宮崎訳:紺色のリンゴの子供に見せて、それは何かとたずねると、リンゴだと認識するまでにかかる時間が赤いリンゴのときよりも長いことが研究により明らかになっています。子供たちは、紺色のリンゴは「奇妙でおかしい」と思うものです。
これで誤解を招かずにbule appleを読みやすく訳したことになります。
今回のポイントをおさらいしておきましょう。
原文に色を表す言葉が使われている場合、英語話者と日本語話者とでは色の捉え方や言葉の上での使い方が異なる場合があることに注意して訳す。
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