3年内加算による節税効果ゼロを回避するテクニック

ここまでの解説で改めて確認することができたのではないだろうか。相続税対策として行ったはずの生前贈与から3年以内に相続が発生すると、節税効果がゼロになるどころか、生前贈与を受けて贈与税を支払った行為自体が無駄骨になってしまうのだ。これは何としても避けたいところだろう。

人の生死は予測できないことであり、3年内加算ルールの適用対象になるような事態に絶対ならないとは言い切れない。それでも、より確実な相続税の節税を図りたいのであれば、対策を講じることはできる。以下を参考にしてもらいたい。

生前贈与は早めに始める

近い将来相続が発生することを見越して生前贈与を行うのではなく、早い時期から計画的に生前贈与を進めることが大切だろう。

ここで注意したいのは定期贈与だ。1年に110万円までの贈与は非課税だからといって、「10年間、毎年110万円ずつ生前贈与する」という取り決めを交わすことである。

この場合、合計1,100万円を10回に分けて贈与するとみなされて、1,100万円に対して贈与税が課せられてしまうのだ。これを回避するために、たとえ10年間に分けて生前贈与する予定であっても、特に取り決めることなく毎年110万円ずつ贈与すれば、毎年基礎控除の対象になり、10年で1,100万円贈与を受けても結果的に非課税となるのだ。

贈与の基礎控除を最大限活用する

1年間に110万円以下の贈与が非課税になる。これは贈与を受ける側が1人につき年間110万円以下受け取るのであれば贈与税を支払わなくてよいという意味であり、贈与を受ける人に相続権があるかどうかも問われない。

したがって、相続人の相続税負担を軽減するのが目的であれば、相続権のある子供たちはもちろんのこと、その子供の配偶者、相続権のない孫たちにも、年間110万円ずつ各自に贈与すればよいのだ。それが何人になろうとも、1人110万円を超えなければすべて非課税となるのだから、大きな相続税の節税効果になる。

孫には3年内加算ルールは適用されない

親が高齢で今後数年のうちに不測の事態が起きないとは言い切れないが、できるだけ生前贈与によって相続税の負担を減らしておきたいという場合には、孫に生前贈与すれば基本的に3年内加算ルールの適用を受けることはない。

このルールは、原則として相続権のある子供が対象なのだ。それに加えて、孫は直系卑属であるため、特別贈与財産の税率が適用され、基礎控除の110万円を超える贈与を受けても税率が優遇される。「孫への贈与」が話題にのぼるのはこのためだ。

しかし、孫といえども、3年内加算の対象になることがある。遺言書で孫に遺産を相続させることが定められているケースや、孫が生命保険の受取人になっているケースだ。いずれも、孫を実質的な相続人としてみなしており、3年内加算の対象になってしまうのだ。

3年内加算ルールを考慮して、生前贈与で効果的な節税対策を

生前贈与は相続税対策の有効な手段だということはすでに誰もの知るところである。本記事をご覧になって、生前贈与の3年内加算とは、相続権のある子供が親から贈与を受けてから3年以内にその親が亡くなり相続が発生すると、生前贈与のメリットが享受できないという仕組みであることも十分ご理解いただけたはずだ。

生前贈与という方法で少しでも相続税を減らしておきたいと願う親の気持ちに報いるためにも、どのような生前贈与の形がもっとも有効であるかを、親子でじっくり話し合ってみてはいかがだろうか。

文・ZUU online編集部/ZUU online

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