節税対策としての生前贈与と3年内加算ルールの関係性

2013年度の税制改正では、新しく設けられた特別贈与財産の税率が低めに設定されていること、相続税の基礎控除額が引き下げられていること、こうした理由から、生前贈与が相続税の節税対策として話題に上るようになった。これは言い換えれば、政府のお墨付きを得て、生前贈与という形で相続税の節税対策ができるようになったわけであり、この権利を行使しない手はない。

生前贈与するメリットは、特別贈与財産として優遇された税率だけではない。基礎控除額を超える遺産総額があり相続税が発生するようなケースでは、相続税より贈与税のほうが支払う税金が少なくてすむ場合が多い。

例外もあり、5,000万円もの高額な生前贈与では上限の55%の税率が適用となって優遇税率の恩恵を享受することができない。このような一部の富裕層の相続では、税率も50%前後となり、生前贈与と相続のどちらを選んでも大差ない。

しかし、相続税の支払い義務のある一般的な富裕層では明らかに生前贈与のほうが有利だ。法定相続人の人数で按分した相続分に課せられる税率は最低でも10%になる。生前贈与を受ける金額が1年で110万円以下であれば非課税、課税されても税率が10%を超えるのは550万円前後からだ。つまり、非常に高額な生前贈与でなければ、何年にもわたって生前贈与を受けたほうが相続するよりも得になると考えることができるのだ。

確かに、多くの場合、生前贈与は相続税の節税対策の最初の選択肢であるに違いない。しかし、悪質な相続税逃れを防止するために、案の定、例外規定が設けられている。親が余命6ヵ月の宣告を受けてから、相続税の節税のためだけに、慌てて相続権のある子供たちに生前贈与することは認めないという趣旨だ。

3年内加算ルールとは

相続権がある直系卑属に生前贈与が行われてから3年以内に本人が亡くなって相続が発生すると、生前贈与額が相続財産に加算され、相続税の対象に組み込まれるというルールが3年内加算ルールである。

簡単な例で本ルールを検証してみよう。相続権があるAさん(父)が一人っ子のBさん(子)に生前贈与として1年目に300万円、2年目に300万円が贈与された。各回とも、申告によってそれぞれ19万円の贈与税を支払った。

ところが、2回目の贈与があった翌年、Aさんが急死して相続が発生し、その時点での遺産8,000万円が相続財産となった。Bさんへの1回目、2回目の生前贈与から3年以内にAさんが亡くなったため、合計贈与額300万円は相続財産に加算されることになり、結果的にAさんの相続財産は合計8,300万円とみなされた。

Aさんの遺産の法定相続人は、妻とAさんの2人であるため、基礎控除額は、3,000万円+(2人×600万円)=4,200万円となる。この結果、相続税の課税遺産総額は、8,300万円-4,200万円=4,100万円であり、法定相続分で按分すると257万5,000円がそれぞれに課せられる相続税となる。

Bさんは贈与税を過去2回、合計38万円を納付済みなので、Bさんが今回納付すべき相続税は、257万5,000円-38万円=219万5,000円となる。