奈良県の高取町にある壷阪寺。眼病封じのご利益があり、平安時代には天皇も参拝に訪れたほど。目の観音様として有名な本尊はもちろんですが、着目して頂きたいのは境内に点在するインドから招来された巨大仏たち。山の斜面に立つ全長20mもの大観音石像の存在感は格別。そして春に楽しめるのが「桜大仏」。壷阪大仏と呼ばれる釈迦如来像とそれを覆う満開の桜の見事な競演。そんな春だけ楽しめる珍しい光景をご紹介します。
眼病封じのお寺、壷阪寺
南には桜の名所、吉野がある壷坂の山の中腹に位置する壷坂寺(つぼさかでら)は、703年元興寺の弁基上人がこの山で修行した際、愛用の水晶の中に感得した観音像を祀ったのが始まりとされています。
本堂である八角円堂に祀られている本尊・十一面千手観世音菩薩は、眼病平癒の霊験あらたかな観音様として古くから信仰されてきました。平安時代には桓武天皇も祈願に訪れたそう。目鼻立ちがくっきりとして、どこかエキゾチックなお顔立ちの本尊は通常拝観可能です。
堂内では、目の疲れや充血に効く御祈祷済みのオリジナル目薬も販売されています。パソコンやスマホで目を酷使する現代人の私たちも、ぜひご利益をいただきたいですね。
古い眼鏡に感謝の気持ちを込めて。めがね供養観音
長年お世話になってきた眼鏡をただ捨てるのはしのびない、という方たちからの相談を受け建立された「めがね供養観音」。毎年10月18日には古くなった眼鏡やコンタクトレンズに感謝し、台座に奉納供養する「めがね供養会法要(くようえほうよう)」が行われます。
お里・お市の愛の物語『壺坂霊験記』(つぼさかれいげんき)
現代でも歌舞伎で上演される『壺坂霊験記』はここ壷阪寺が舞台のお話。
盲目の夫、沢市は毎晩朝方家を出て行く妻、お里の行動を浮気をしているのでは、と怪しみます。しかし、実はお里は沢市の目がよくなるよう3年間欠かさず壷阪寺に朝詣でをしていたのでした。自らの考えを恥じた沢市は身投げをしてしまい、悲しんだお里も後を追います。しかし、二人の夫婦愛が観音様に届き奇跡が起こり、二人は助かり、また沢市の目も開眼したのでした。
明治時代、浄瑠璃の演目としてこの物語が上演されると、世間の反響を呼びお寺への信仰も広がりました。