フリーランスの方や自営業の配偶者の方など、国民年金第1号被保険者の老後の年金は、基本的には国民年金のみです。会社員と異なり、厚生年金に加入しませんから、将来受け取る年金額に不安を感じることもあるでしょう。そこで、第1号被保険者が公的年金に上乗せする年金制度である国民年金基金について詳しくご紹介します。

国民年金基金に加入するメリットや加入条件は?

(写真=fizkes/Shutterstock.com)

国民年金基金に加入するメリット

国民年金基金に加入する最も大きなメリットは、老後の年金を増やせることです。加入は口数制で、自分が何口加入するかによって受け取る年金額は異なります。1口目は終身年金ですので、長生きをした場合に備えることができます。

もう一つの大きなメリットは、税金を節約できることです。国民年金基金の掛け金は全額所得控除の対象になります。例えば、毎月2万円の掛け金であれば、年間24万円を所得から差し引くことができます。

仮に課税所得が300万円の方であれば、年間24万円の掛け金を課税所得から差し引くことで、所得税と住民税を合わせた約20%(4万8,000円)の税金を毎年節税できます。

1年間の節税額だけを見るとインパクトは大きくないかもしれませんが、掛け金の払い込みは基本的に60歳までですから、トータルするとその節税額は大きくなります。

年金の受け取りに保証期間があるタイプを選択すれば、加入者に万一のことがあった場合にも遺族に一時金が支払われますから、生命保険代わりにもなります。

国民年金基金の加入条件

国民年金基金に加入できるのは、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のフリーランスの方やその家族、学生などの国民年金第1号被保険者、海外に住んでいる国民年金任意加入者などです。ただし、国民年金の保険料を免除されている方は加入できません。

iDeCoや小規模企業共済との違い

国民年金基金のほかに、第1号被保険者が加入できる制度として、iDeCoや小規模企業共済があります。いずれも掛け金を拠出して自分自身の資産を作るという目的や、掛け金は全額所得控除できるという税制面は、国民年金基金と同じです。では、違いはどこにあるのでしょうか。

iDeCoは掛け金を自分自身で運用します。運用する商品として定期預金や投資信託などがあり、自分自身で運用して年金を増やすイメージです。銀行や証券会社などの金融機関で加入の申し込みを行います。

小規模企業共済は小規模企業の経営者や役員、フリーランスのための退職金制度です。目的は、小規模企業の経営者やフリーランスが廃業や退職をした際、その後の生活を安定させるためですから、年金の上乗せ制度という位置づけではありません。必ずしも老後に共済金を受け取るわけではないということです。また事業をしている方のための制度であるため、低金利の事業貸付制度があります。

なお、それぞれの制度には掛け金に上限があります。国民年金基金とiDeCoの掛け金月額は、両方合わせて6万8,000円です。小規模企業共済は7万円までです。

前納も可能!国民年金基金の掛け金はいくら?

(写真=Vasin Lee/Shutterstock.com)

掛け金を調べる方法

掛け金は、国民年金基金のホームページで調べることができます。性別と年代を入力すると、掛け金の月額表が表示されます。月額表から、まず1口目のプランを選択します。1口目は終身年金で、A型とB型の2種類があります。

A型は15年の保証期間があり、B型は保証期間がありません。その分、掛け金はB型の方が少なくなります。次に2口目です。2口目は任意で選びます。1口目と同じ終身年金のタイプか、5年~15年保証の確定年金を選択します。

40歳女性フリーランスの掛け金は1万7,440円

実際に、40歳フリーランスの女性が誕生月に加入する場合の掛け金と年金額を計算してみましょう。1口目に保証期間があるA型の終身年金、2口目に65歳から80歳まで15年間の確定年金(I型)を1口選択するとします。

この場合の掛け金の合計は1万7,440円になります。年間20万9,280円ですが、4月から翌年3月までの1年分の掛け金を前納すると、0.1ヵ月分の掛け金が割引されます。

払込期間は60歳までちょうど20年ですから、トータルの掛け金は約420万円です。それに対して受け取る年金は、65歳から80歳までは年間24万円、80歳以降は年間18万円を終身で受け取ることができます。

国民年金基金でお得に老後の準備を

(写真=StudioByTheSea/Shutterstock.com)

老後の準備を始めるなら、国民年金基金とiDeCoによる積み立てを考えてみましょう。ただし、国民年金基金は一度加入をすると、自分の都合で脱退することができません。また、途中で一口目を減額することもできません。iDeCoの場合も、掛け金の拠出を休むことはできますが、途中でやめることはできないため、注意しましょう。

国民年金基金はiDeCoとの併用が可能ですが、掛け金に上限がありますから、iDeCoと併用するなら、加入の前に国民年金基金とiDeCoの掛け金の割合を考えておいた方がよいでしょう。どちらも節税効果の大きい制度ですから、早く始めるほどお得です。まだ加入していないフリーランスの方は、検討してみてはいかがでしょうか。

文・前田菜緒(CFP・1級ファイナンシャルプランナー)

【こちらの記事もおすすめ】
老後のための、幸せ貯金計画
「老後のお金」3つのポイント
豊かな老後のための3つのToDo
人生100年時代に必要な「生涯学習」って?
独身女性が安心できる貯金額はいくら?