かつて東北経済の要衝として栄えた増田町には、蔵を主屋で覆う独特の建築様式があります。近年まで密やかに守られてきた内蔵の中は、想像を超えた世界が広がっていました。そんな横手市増田で町歩きと美味しいランチを楽しんでみませんか?

秋田県の増田町とは?

神秘のベールを脱いだ「内蔵」のあるレトロ町【秋田県増田】【前編】1.jpg
(画像=Olive、トリップノートより引用)

秋田県の南東部に位置する横手市増田町は、江戸時代から養蚕や葉タバコ、生糸などの物資が行き交う拠点として栄え、明治から大正にかけては、銀行や電気会社などが設立され、県内有数の商業地となりました。商業規模の拡大によって、商人たちは、競うように蔵を建て、主屋を拡大し、大型の店舗を構えるようになります。

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(画像=Olive 山吉肥料店奥行き、トリップノートより引用)

現在商店街となっている中七日町通りは、直線で400mほどの通りに商家が並び、間口は4間から5間(7.24m~9.05m)前後ですが、奥行きは50間から70間(90.5m~126.7m)という短冊形の地割で、裏通りまで接する長さです。

こうした歴史的建造物が多く残る町並みは、秋田県では仙北市の角館に次いで、2013年、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。現存している内蔵の一部は見学ができるようになっています。

蔵を鞘(サヤ)で覆うって、どういうこと?!

保存地区の建物の特徴が、「蔵を鞘で覆っている」こと。そう聞いて、ピンとくる方は少ないかと思います。通常、蔵は敷地内に母屋とは別棟にあるのが一般的ですよね?しかし増田の蔵は、家の中にあるのです。下の写真の2階部分をご覧いただくと家の中にすっぽりと、蔵がおさまっているのがおわかりいただけると思います。

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(画像=Olive 内蔵の特徴がわかりやすい佐藤又六家の住宅、トリップノートより引用)

増田町では、細長い奥行きのある土地を生かし、店舗や主屋の背後に内蔵を建て、それらをすべて覆う家を建てているのです。屈指の豪雪地帯といわれるこの地で、蔵や主屋を豪雪から守るために、さらに大きな家で囲う形です。

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(画像=Olive 佐藤養助漆資料館、トリップノートより引用)

内部は、主屋や内蔵が連なり、通り土間(土間の廊下)でつながっています。内蔵は一見すると、その存在に気付きにくいため、2008年に調査が行われるまで、秘密のベールに包まれていました。2017年にはテレビCM『大人の休日俱楽部』でも、増田町が紹介され、吉永小百合さんが撮影で訪れています。

内蔵の中はどうなっているの?

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(画像=Olive 佐藤又六家、トリップノートより引用)
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(画像=Olive 旧杏華堂石田医院座敷蔵、トリップノートより引用)

内蔵は、その商家によって使い方が様々ですが、大きく分けると、大切な家財道具や衣類などを収納した文庫蔵と居住空間とした座敷蔵の2種類が最も多いようです。

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(画像=Olive 日の丸醸造 酒蔵の慶事に使われていた内蔵。現在は客間、トリップノートより引用)

長い間、増田町の内蔵は家族限定の空間として、大切にされてきました。ある家では、通常の居住空間や収納場所として、現在も使用されています。一方ある家では、客人を迎えるために贅をつくした客間として使うこともあるようです。

冠婚葬祭を行う場として、今でも内蔵内部の公開を控えているお宅もあります。ここでは、産婆さんを呼んでの出産も、入棺前の仏事も、内蔵の中で行う神聖な場所として代々守られているそうです。町内や隣近所でも、蔵を見せる習慣がなかったことから、内蔵の所在さえ隣家に知られない場合もあったというのです。