「貯蓄と借金は切り離しておきたい」という心理

住宅ローン残高から預金残高を差し引いた額にのみ、金利が課せられるという「預金連動型住宅ローン」。金利の支払いを低く抑えるという点で理想的な条件であるにも関わらず、世界経済フォーラムが2014年に実施した調査では、英国の98%の消費者がこの返済方法に拒否反応を見せたという。

ここでの心の会計は、「貯蓄と借金(住宅ローン)を結びつけることで、貯蓄が借金に吸収されてしまうような錯覚に陥る」というものだ。貯蓄は貯蓄、借金は借金と完全にラインを引いておけば、「借金はあるが貯蓄もある」という安心感につながるようだ。「一括返済できるだけの余裕はあるのに、買い物では分割払いやリボ払いする」という心の会計と共通する。

心の会計を見直し、矛盾点を意識したお金の使い方を

もうひとつ矛盾した心理の例を挙げると、住宅などの高額商品をローン購入する際、それに付随する手数料を値切ったり節約しようとする人は少ない。しかし同じ金額の手数料を少額購入などで請求されると、たちまち「高い」「もったいない」となる。住宅は「人生の一大購入」であり、その金額の大きさに比べると手数料などは取るに足らないものという解釈だ。

米経済学者のリチャード・セイラー氏はこのような心理の仕組みを、「人間にはお金を減らしたくない」という感情が意識下にあり、支出の度に警報となって鳴り響くと説明している。貯蓄を借金返済に回さないという心理もそこに起因する。

こうした心の会計が「お金の使い方の矛盾」を生みだし、時として非合理的な行動に走らせる。特に「浪費がやめられない」「貯蓄できない」と悩んでいる人は、一度自らの心の会計を見直し矛盾点を認識したうえで、自分が判断した価値ではなく金額の価値でお金を使うようにしてみたらどうだろう。

文・アレン・琴子(英国在住のフリーライター)/ZUU online

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